「100年に1人の逸材」棚橋弘至のキャリア論 新日本プロレス・棚橋選手に直撃!(前編)

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塩野:社会人でさえ、けっこう「気にしい」で、病んじゃう人いますからね。

棚橋:そうですね。そういう自分に必要のない情報をうまくはじいてはじいて、褒められているところだけを見るスキルもひとつの能力だと思いますよ。

塩野:なるほど、気にしないのも能力のひとつですか。

棚橋:どうしても気になる方は、ポジティブに転換すると無理があるので、受け入れてしまうことですね。受け入れて、あとで見返してやればいい。

塩野:それもまた「野心」ですね。

“いつか見返してやる”という気持ちをずっと持っていた

棚橋:ノアという プロレス団体がすごく人気があったとき、僕はノアの選手にボコボコに負けたことがありました。その時、「絶対にこいつらより有名になって、チャンピオンに なってやる」と決めた。直接戦えなくても、自分がもっと有名になって、結果を出して強くなって、世界で評価されるようになれば、「なんだよ、棚橋かよ」と 思ってた他団体の人間を見返してやれる。僕、カラッとしているように見えて、実はけっこうどす黒いところもある、しつこい性格なんですよ。

塩野:「太陽の天才児」と言われているのに。

棚橋:太陽にも黒点がありますから(笑)。

塩野:でもそういう気持ちを持ち続けるのが大事ですよね。棚橋さんは新日本が冬の時代だったとき、「有名じゃないオレが悪いんだ」みたいなことをおっしゃっています。サラリーマンにも、お客さんにひどい扱いをされたり、社内で理不尽な目にあったりして、「自分がすごくないからダメなんだ」って思うときがあると思うんです。

棚橋:「もっと実力があれば」とか、「一度でもでかい仕事を成功させられれば」、みたいなときですよね。そういうときに自分が試されるんですよね。

僕の試合はいまでこそ、棚橋コールが起こったり、手拍子が起きたりしてすごく華やかですけど、こうなったのは最近です。昔は一生懸命試合しているのに、コールも起きない、拍手も起きない。そういう中で長年やってきたので、僕の歓声に対する飢餓感は、今の若い子たちとは段違いなんですよ。

コールが欲しいんです。コールがうれしいんですよ。だからそのためにどうすればいいか考えました。それが有名になるということです。有名になれば自分を知っている人が増える。知っている選手は応援しやすい。もっと世間的に有名になれば、興味をもって会場に来てくれる人も増えるだろう。そう考えていましたね。一般の仕事では、有名になるというのはまたちょっと違う話かもしれないですけど。

塩野:でもどんな業界でも、名が売れるということはありますよね。次回は実力で有名になるにはどうすればいいのかということから、お聞きしたいと思います。

(構成:長山清子、撮影:今井康一)

中編は11月11日(火)、後編は14日(金)に公開します。お楽しみに!
塩野 誠 経営共創基盤(IGPI)共同経営者/マネージングディレクター JBIC IG Partners 代表取締役 CIO

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しおの まこと / Makoto Shiono

国内外の企業への戦略コンサルティング、M&Aアドバイザリー業務に従事。各国でのデジタルテクノロジーと政府の動向について調査し、欧州、ロシアで企業投資を行う。著書に『デジタルテクノロジーと国際政治の力学』(NewsPicksパブリッシング)、『世界で活躍する人は、どんな戦略思考をしているのか?』(KADOKAWA)等、多数。

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