棚橋:そうですね。健想選手は身長も190センチ以上あって、学生時代は明治大学の有名ラガーマン。鳴り物入りで入ってきて、マスコミの注目度も高いわけです。一方、僕は入門テストに2回も落ちて、3年目でやっと受かって、身体もレスラーにしては小さいほう。だから僕は、彼についていこうと思ったんですよ。そうやって一方的にライバル視するのがすごく大事なことなんです。会社勤めの場合、同期は大勢いると思うんですけど、そのなかで「こいつにだけは負けねえ」って、ずっと思っておくのが大事。それがひとつのモチベーションになる。
塩野:そうですか。健想選手について行こうと。
ライバルとか友情とか野心とか、持っていたい
棚橋:タッグを組んだりもしてましたけど、こっそりついていこうと。目立つ人のそばにいると、自然と僕の注目度も上がるわけです。「健想と組んでいる新人」みたいに。そこで意地を見せて、みんなの予想以上に頑張っていると、「あれ、健想じゃないほうもけっこういいなあ」みたいに見てくれる人が必ずいる。だから悪い言い方をすれば、彼を利用させてもらったというか。
塩野:なるほど。そういうのが恥ずかしい人っているじゃないですか、特に若い人で。誰かをライバル視するなんてダサいと思ってしまうような。
棚橋:僕は少年ジャンプ世代なので、ライバルとか友情とか野心とか、すごく好きなワードですけどね。もし恥ずかしければ、言葉にしなくてもかまいません。
塩野:逆に言葉にせず、心の中で思っているだけのほうが、野心が増しそうですね。新日本に入ってプロになり、初めていろいろな人の批判にさらされて、「世の中にはオレのことが嫌いな人もいるんだ」と気づいたそうですが、本当ですか。
棚橋:いまだに不思議ですね。嫌われる要素が一個もないのに(笑)。
塩野:私は棚橋選手と同世代、ちょい上くらいですけど、昔は学校でも、クラス内のグループや力関係が目に見えましたよね。
棚橋:あそこはやんちゃ系だとか、おとなしいとか、美人の集まりとかね。いまは本当に子どもたちもストレスフルですよ。SNSなどもあるし。
塩野:いじめも、SNSや「学校裏サイト」などで行われていて、かわいそうだなと思います。棚橋選手みたいに、「世の中にオレのことを嫌いな人間がいるわけない」って、一段上に突き抜けられればいいですけど。
棚橋:いちばんの解決方法は、見ないことです。学校裏サイトって僕は見たことがないので、どんなことが書いてあるかわからないけど、そんなさまつなこと、もう一切気にする必要はないですね。仮に悪口が書かれているのを見てしまったとしても、他の人はほとんど誰も見ていないですよ。ネットに載ったというだけで、世界中が自分のことを見ているとか、自分を批判していると思ってしまいがちなんですけど、そんな情報は伝わっていないから大丈夫です。この境地に至るには、若干時間がかかるんですけど。
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