※前編はこちら:僕らの仕事、どこまで「人工知能」が奪うのか
ロボットはノーベル賞クラスの発見をできる?
塩野:つい先日、日本人のノーベル物理学賞3人同時受賞がニュースになりました。人工知能やロボットが進化してくると、実験や解析など、ロボットが得意な作業でどんどん発見や発明が起こってくるような気がします。近い未来には、ロボットによる発見で、ノーベル賞クラスの発見が起こることもありうるのではないでしょうか?
松尾:そうですね。処理能力という面では、人間がかなわないところもたくさんでてきます。
たとえば、将棋やチェスなどの世界で、人工知能と人間と対戦することが行われていますが、チェスでは、1996年に人工知能が世界チャンピオンを破って以来、対戦するコンピュータのハードウェアの制限、データへのアクセス制限、ルールの変更などさまざまなことが行われています。それから、人とコンピュータがタッグを組んで戦うような大会も行われています。
将棋では、いま将棋のプロ棋士との対戦が盛り上がっていますが、人工知能のプログラムを公開して、それをプロ棋士のほうが練習できたり、人工知能側のサーバーの容量が決まっていたり、コンピュータに対して条件を課さないと不公平であるという状況に少しずつ差し掛かってきていると思います。
塩野:近い例で考えると、もうすでに行なわれていると思うのですが、バイオ関連の研究においても、かなりコンピュータが使われていますよね。ウェット系、ドライ系と区別されて呼ばれていたと思います。試験管の中での実験=ウェット系、コンピュータを使ったアルゴリズムによる解析=ドライ系という分類です。すでにもう、アルゴリズムなしでは遺伝子解析ができないところまできているようで、そのうち科学分野でも実験の大部分を人工知能に手伝ってもらいました、という世界が来ると思うんですね。
松尾:今でもそうですね。最近では、ケプラー予想という球体の充填問題に対する解の予想を、コンピュータで解くことに成功した学者がいます。コンピュータが出したものは、300ページに渡る数学の証明で、人間の査読者では「おそらく正しい」というところまでしか言えなかった。それを複数のコンピュータで検証することで、初めて正しいことが確かめられたという話で、コンピュータを使って解いた証明を、コンピュータが確かめるという段階にきているということですね。
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