未来のロボットはノーベル賞を獲れるか? 人工知能は、急速に賢くなっている<後編>

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塩野なるほど。パーツを集めていって一通りの流れはできても、全体として良いものができるとは限らない、ということですか。

松尾そうですね。それに近い。パーツから抽象化されたものとして、「登場人物」、「登場人物間の関係」、「新しい出来事」などの要素があって、それらの変化がストーリーだと思います。抽象化して考えることが、いまのところコンピュータが苦手とする部分ですから、「星新一のストーリーにはこんな展開が多い」みたいな捉え方、理解が難しい。

塩野よくあるパターンの「抽象化」が難しいということですね。

松尾人工知能の小説家が可能になると、文学賞に応募することもできるようになります。一度抽象化がうまくいってしまえば、量産も可能になりますから、文学賞に大量に「人工知能が書いた小説」が応募されるようになるかもしれません。そうなったら、文学賞の中にも、人工知能部門、っていうジャンルを確立してもいいかもしれませんね。

塩野星新一だけでなく、ライトノベルもできそうですね。ライトノベルによく出てくるキーワードや「らしさ」がテンプレート化できれば、ライトノベルが量産できそうです。

コンピュータが自ら「学ぶ」ようになった

塩野ところで、最近、フェイスブックなどでの顔認識の精度が驚くほど上がってきています。顔の画像認識のような場合、人工知能はどうやってその人を特定の人物と見なすのですか。

松尾やはりたくさん教え込むことですね。ある顔画像を認識したいと思えば、正解となる画像をできるだけ多く見せて教え込む。逆に不正解のほうもたくさん教えます。データが蓄積されると、この顔画像はどの画像に近いかが判断できるようになる。原理的にはそういうことです。

塩野やはり多くのデータの蓄積と処理がカギですね。それでは、人工知能はいつの日か、人間並みにいろいろなことに「気づく」ようになりますか?

松尾そこがいま研究分野として面白いところです。いままで画像認識の精度が上がらなかったのが、最近はグーグルの研究で話題になることも多いのですが、かなり様子が変わってきました。「ディープラーニング」と呼ばれる領域ですが、画像のどこに注目すればいいかを判断する「特徴量」を作り出し、それによって顔が見分けられるようになります。

人間の場合、特に人の顔に関しては、非常にたくさんの情報を読み取ります。唇の両端は上がっているか下がっているか、目尻の動きはどうか……。本当にさまざまな情報を読み取っています。こうした「特徴量」を人が手で作るのは難しいのですが、コンピュータが自動的に作れるようになりつつあって、顔画像の認識精度もどんどん上がってくると思います。

塩野それはコンピュータが勝手に「人間の顔とは、こんなものではないか」と仮説を立てるということですか。

松尾はい、そういうことです。もう少し正確に表現するとしたら、「顔によくある特徴はこんな具合だよね」と勝手に見つけています。

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