大好きな「電通」を辞めて僕たちはどこへ行くのか クリエイティブディレクターが語る広告の未来
齋藤:電通からの独立に関して、僕と東畑さんの共通点は「時代の変わり目にある」ことかなと思います。振り返ると、僕が電通を辞めた2000年代中頃はマスメディアがネットによって変わりつつあった頃でした。
東畑:今はまさに広告業界自体がドラスティックに変わろうとしていて、会社も生き残るために変化をしようとしています。世の中の、効率化と最適化の流れは、不可逆だと思っています。ただ行きすぎた効率化は、答えが同質化するので「らしさ」を失わせる。「らしく生き残る」ために、企業やブランドの存在意義を再発見して、効率だけではなく、意味や価値やLOVEを作る専門家でありたい。自分を役立てる場所をハッキリさせたいと思いました。
最高の職場、電通
齋藤:もう1つの共通点に「後ろ髪を引かれる気持ち」があるように思っていて。電通はあまりにもいい会社じゃないですか。居心地がよくて、すばらしい人がいっぱいいて、刺激もある。
東畑:まさにそうで、辞めるにあたって、悩み迷い葛藤しました。たくさんの仲間がいて、やるべき仕事があって、自分にとって本当に居心地のいい場所でした。だから、迷いなく踏み出したわけではなく、51:49、ギリギリの決断でした。
いざ辞めるとリアルに考え出すと、怖くなったり不安になったり。夜中、うなされて目が覚めることが何度もありました。退職ボタンを押すか悩んだ最後の夜に、息子と2人でご飯を食べていたとき、ふと「会社辞めるのが怖いんだ」と打ち明けたんです。そのとき、息子から「どっちがよかったか、教えてよ」と言われて。その一言を聞いて、「挑戦してみよう」と思えたんです。