大好きな「電通」を辞めて僕たちはどこへ行くのか クリエイティブディレクターが語る広告の未来

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

東畑:のちに僕が新人の教育係になったときも「相手が何をしたら喜ぶか」という想像力が僕らの仕事にとってとても大事なんだという話をしていましたね。1つひとつ相手の想像を上回るから人の記憶に残るのであり、だからこそ面白いしやりがいがあるのかなと思います。

それに関連する話で、後輩が屋形船で宴会をやってくれたことがあって。1人遅刻で乗れないまま出港したんですけど、1時間後にびしょ濡れで「すみません、遅刻しました」と登場したんです。こっそり隠れておいて、頃合いを見て自分で水を掛けて現れたんでしょうね。

齋藤:面白い(笑)。

東畑:相手の想像を半歩上回る、サービス精神。僕は太郎さんを見ていて、いつもそんな姿勢を感じるんです。仕事はつねに考えることがあってつらい側面もありますが、相手をハッピーにするための仕事は、苦しい顔をしてやるものじゃない。苦しいときは、「そんな顔してやる仕事じゃないだろ」と自分にツッコんでいます。これは太郎さんから大きく影響を受けたことですね。

「自分は何ができるのか」を見つける

東畑:僕の中で太郎さんは根アカでポジティブな、「どこでも生きていける人」。dofの「なんとかする会社。」というところに、まさに太郎さんの生き様が集約されているなと思います。

だから太郎さんの著書を読んで、太郎さんも悩みながら自分の存在意義を必死で作ろうともがいてきたんだと、意外な気持ちになりました。

齋藤太郎(さいとう たろう)/コミュニケーション・デザイナー/クリエイティブディレクター。慶應義塾大学SFC卒。電通入社後、10年の勤務を経て、2005年に「文化と価値の創造」を生業とする会社dofを設立。企業スローガンは「なんとかする会社。」。ナショナルクライアントからスタートアップ企業まで、経営戦略、事業戦略、製品・サービス開発、マーケティング戦略立案、メディアプランニング、クリエイティブの最終アウトプットに至るまで、川上から川下まで「課題解決」を主眼とした提案を得意とする。サントリー「角ハイボール」のブランディングには立ち上げから携わり現在15年目を迎える(撮影:尾形文繁)

齋藤:根アカでいたり、ポジティブに考えていられるように、人知れず努力と訓練はそれなりにしているからね。よく映画とかで鏡に向かって「俺はできる!」って叫ぶシーンがあるじゃないですか。あれ、僕も毎朝やっているから(笑)。

東畑:仕事って、自分の居場所を作っていくことでもあるじゃないですか。著書にもメディアや営業、経営と、ある種の「辺境」からクリエイティブディレクターのポジションを作るために必死に戦い、その中で存在理由をつむぎ出してきた歴史が書かれている。でも、自分の強みを作ることは弱みを知ることと一緒ですよね。一緒に起業した大島(征夫)さんというクリエイティブディレクターの大ボスみたいな人と対峙しながら、「自分に何ができるのか」を問い続けるのは、大変だったと思います。広告業界の太陽みたいな存在ですからね。

齋藤:太陽のなかでも、ほぼ黒点みたいな人だよね(笑)。

東畑:巨大な太陽の前で、全然違う付加価値を持つクリエイティブディレクターを目指し続ける。これはすごくタフな環境ですよ。だから太郎さんは異常なスピードで成長したんだろうし、そこで「クリエイティブは誰もが持っていて、誰もが用いたほうがいい」という結論にたどり着き、その過程で得てきたメソッドが僕はすごく面白かったです。

次ページハイボールブームの決め手になったもの
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事