これらの制度では、会社側の本気度が問われる。制度はあっても、実際には機能していない会社も少なくないからだ。こういう制度の年齢を上限40歳とかに限定しているケースもある。「管理職以上の年次は対象外」という趣旨だろうが、中高年の戦力化を考えていないことが透けて見える。これではいくら制度を作っても、働かないオジサンの予防策にはなりえない。
以前、積極的に取り組んでいる会社の事例を聞いたことがある。
その会社では、単に職務のマッチングを行うだけでなく、手を挙げた社員に対して徹底的に、その職務に対する意欲や能力を確認するとともに、希望した職場での実績も厳しく求める。そのため、社員にとって決して甘い制度ではないそうだ。
また会社側は、手を挙げた全社員にフィードバックを実施し、個々の社員の納得感を高め、今後のキャリア開発につなげるよう配慮しているという。このような対応をきちんと行えば、社内での人事評価の透明性や信頼度も高まっていくのである。
出戻り社員の受け入れも
昨今は、ほかの企業の正社員の出向者を活用するケースがみられる。たとえば、あるメーカーの造船部門から、自動車会社の製造ラインに社員を出向させるケースや、電機メーカーの中年社員が、メガバンクの店頭で働いているケースが新聞に紹介されていた。いずれも中高年社員が対象である。
記事は、リストラの文脈で書かれていたが、社員の選択を前提にすれば、異なる業種や仕事を経験することによって、視野が広がり、新たな自分を発見することもありうる。出向元企業の年金は継続できるし、元の会社に戻れるという条件があれば、社員にも決して不利にはならないだろう。会社も中高年社員の働く場を広げることができる。ここでも「選択と個別交渉」がポイントである。
今までは、ベンチャー企業に対する企業の投資は、資金の投入しか考えられてこなかった。しかし新興の企業では、人事や経理、営業などでベテランの中高年社員を欲している例もある。会社側は、在籍出向という形で人的資源を投入するという投資も考えられる。出向した社員も、求められる職場で新たに頑張れるかもしれない。
役所内の内部調整の仕事では、気苦労が多くて精神的にも不安定だった中高年の公務員がいた。彼は出向した社会福祉法人で障害者支援の仕事に取り組むようになると息を吹き返し、今では役所との調整に走り回っているという例もある。
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