野球データ分析で日本がアメリカに抜かれた訳 「精神論」が幅を利かせる日本のスポーツ界

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こうして野球界でデータスタジアムの存在感は増したが、森本氏はもともとサッカー畑出身であり、データ分析のビジネスをサッカー界にも紹介した。

サッカーにもデータ分析を展開

「競技の横展開をしないと、データスタジアムは『野球会社』になってしまう。サッカー、ラグビーとひろげていったんです。でも、野球はプレーに区切りがあるので、ほぼリアルタイムでデータが表示できますが、連続する動きのサッカーなどでは流れを全部追いかけることはできない。

1つの動きのたびにビデオを止めて記録しなければなりません。それだけで7~8時間かかり、さらにデータの確認作業も必要なので1試合のデータ入力に10時間以上かかりました。だからリアルタイムではサービスを提供できませんでした。

そのため野球とは異なるタイプのデータ分析ソフトにしました。当時横浜FCでシニアマネージャーを務めていた故田部和良氏に頼んでチームに通いながら信藤健仁監督、リトバルスキー監督らの助言をもとにシステムを開発しました。

その後、横浜Fマリノスの監督になった岡田武史さんにプレゼンさせていただきました。『俺もいろんなもの見てるからそう簡単には驚かないよ』と岡田さんは言いましたが、データが映像と紐づけされているのを見て『何か新しい発見があるかもしれないから1カ月使わせろ』と使っていただくことになりました。

1カ月後、岡田さんは『他のチームにも売るのか?』と冗談交じりに尋ねたあと『使うよ』と言いました。これを聞いたときは本当にうれしかった。そして、その年マリノスは優勝しました。

ただ、データ活用の本質を見抜いた岡田さんはすばらしかったけど、ほとんどはそこまでいかない。システムができたばかりのころ他のチームに売りに行くと分析の担当者が『すごいですね。でもこのシステムがあると、自分の仕事がなくなってしまいますよね』と反応されてしまった」

当時Jリーグの多くの分析担当者の仕事は、分析ではなく試合映像の編集が主だった。それがこのシステムによって大幅に作業時間と負荷が減るので、自分の仕事がなくなってしまうことを恐れたのだ。

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