親としてはとにかく、食事やリラックスできる環境づくりを含めたサポートを求められたという。
「でも、国連でも幹部になるような人たちは、皆さん身体が丈夫。エリート教育では体力と精神力も重視されているんだな、と改めて思いましたね」
IBでは、古典などから普遍的な思想を学んだ上で、今の社会の課題解決にどうつなげていくかについて、論理的に結論まで導いていくことを求められる。2年間の学習成果を問う認定試験は、記述試験と口述試験で構成される。日本の大学入試で多用される、暗記すれば対応できる選択式の問題はない。古典などを通じてこれまでの思想を学んだ上で、自分はどう考えるか独自の見解を示さなければならない。
このあたりの難しさについて、Kさんに聞いてみた。
「カフカやドストエフスキー、メアリー・シェリーといった作家の作品を読まされ、これらにどのような普遍的な思想が宿っていて、それが今の社会にどのように影響しているか――といったことを常に考えさせられました。
口述試験では、手元に何もない状態でも、色々と違う要素を引っ張り出してきて、自分の意見を展開することが求められます。IBをやって良かったことですか?どんなテーマにも対応できる『雑談力』が上がりましたね(笑)」
でもこの雑談力、国際舞台でも実は必要な素養だという。Kさんの「雑談力」という言葉に思わず吹き出しながらも、大崎さんはつかさずこう続けた。
「国連時代の仕事を振り返ってみると、いきなり何か話を振られても、何か考えて言わないといけない場面って、結構ありました。でもその時、文脈を無視して何でもいいから言うというのではダメで、話の文脈を理解した上で、独自の視点から意見を言うことが求められます。いきなり問いを出されても、文脈に即し自分の考えや提案を論理的に説明することが求められるという点では、IBとも共通するものを感じますね」
世の中の文脈を知ってこそ
グローバル人材育成へのニーズが各所で高まる中、大崎さんの仕事にも最近、変化が生じているのだという。グローバル人材育成に力を入れる私立大学や民間の進学塾で、大学生や高校生を対象に、国連を中心に取り組まれている地球規模課題について英語で授業をしてほしいという依頼が増えているというのだ。「良い傾向だ」としながらも、大崎さんは日本社会によるグローバル教育、その延長線上としてのIBの捉え方に懸念を示す。
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