それはズバリ、全人教育だ。IBの試験官が書いた本には、以下のように書かれている。
“国際バカロレアの大きな特色は、「全人教育」というところにあります。これは、思考力・表現力に重点を置いた高い知的水準の達成はもちろんのこと、同時に異文化に対する理解力と寛容性を養うこと、さらに社会の一員としての自覚と責任感を養うことを目標としています。”<『国際バカロレア 世界トップ教育への切符』(田口雅子著 松柏社)より>
「IBの理念としての全人教育というのは、地球市民としての自覚を持って豊かな知識、優れた見識を持つバランスの取れた人間を育成するということだと思います。これは、多様な価値観を尊重しながら『自由』『人権』『民主主義』という、国連憲章に掲げられている普遍的な価値と完全に合致していますね」(大崎さん)
その上で、大崎さんはこう続ける。
「IB取得には社会奉仕が課せられています。これは、知識は持っているだけではダメで、それをどう社会に還元していくかが問われるからです。国連に勤務していた時を振り返ると、リーダーシップを発揮して尊敬されている人に共通するのは、知識・見識を持っていて、他者への共感力があり、創造的なことでした」
これぞまさに、IB教育が目指す人材像だろう。
すごすぎる受験勉強の末に、得られるもの
このように、IBは国際エリート教育にもつながるだけあって、その取得に至るまでのプロセスは、並大抵ではない。長男のKさんに、高校時代の勉強ぶりを振り返ってもらった。ちなみに、Kさんは、IBの必須科目として「文学(英語)」「語学(日本語)」「歴史」「物理・生物」「数学」「美術(建築)」「Theory of Knowledge(知識の理論)」を履修した。
「文学では、古典から現代文学、詩、戯曲まで、作品の一部ではなく全部通読することを求められます。それに加えて、各教科のレポートも書かなくてはなりません。また、他の人のレポートも読んで授業で意見することも求められるので、それに備えておかなければなりません。さらに、選択科目の作品づくりをしながら、サッカー部の試合や海外遠征を認定試験直前まで続けました。とにかくすべてが同時進行でしたね」
「カリキュラムが始まって4カ月後ぐらいからだんだん高度になってきて、徹夜が続いてくるんです。カリキュラムを教えるのに必要な時間が絶対的に足りないので、先生も途中から教えきれなくなって。そうなると『ここは自習しておいて』なんてことになる(笑)。2年目最後の3月〜5月にかけて口述試験が両言語(日本語と英語)であり、その後本試験が始まるので特に大変で、あまり眠れませんでした」
聞いただけで、目眩がしてくる。Kさんの話を傍らで頷きながら聞いていた大崎さんも、こう応じる。
「体力的にも精神力にも大変そうでしたから、今となっては本当によくやったと思います。IBカリキュラムが始まる前に学校で親向けのガイダンスがあったのですが、そこでは『とても過酷なので、親も覚悟して支えて欲しい』というお話がありました。『早く寝かせて下さい』とも言われて、何のことか分かりませんでしたが、やってみるとよく分かりました」
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