「同一労働同一賃金」に関して、どのように取り組むべきか? 企業の人事担当者などから、こうした悩みを聞くことが増えてきました。
同一労働同一賃金とは、仕事内容が同じ、もしくは同等の労働者には「同じ賃金を支払うべきだ」という考え方のことです。
古くは1900年前後から、性別や人種などの区別なしに同じ賃金を支払うべきだと欧州諸国を中心に叫ばれ、近年の日本においては、正規労働者(正社員)と非正規労働者(パートや派遣)の格差が注目されています。日本企業への同一労働同一賃金の適用は、1年延期されていたのですが、その期限が迫ってきています。
「差がない」ゆえの不公平感
日本全体の非正規労働者数はすでに2000万人を超え、労働者全体の37.5%を占めています。しかし、非正規労働者の時給は正規労働者の時給の70%程度しかありません。ボーナスや退職金といった各種制度や教育訓練などについても大きな格差が存在します。
この「格差」を是正することで、これまで不利益を被っていたと思われる社員(主に非正規社員)に経済的余裕をもたらすことが期待されています。ただ、これらの期待が実現されるということは、企業にとっては大きな人件費増を引き受ける覚悟が必要になります。
一方、逆に「差がない」ゆえに不公平感が生まれているケースもあります。例えば、新卒で入社して配属された同期同士、多忙な部署、比較的ゆったりした部署、職場がどこであっても、給与は同じ。それから時間が経過して専門性や市場価値が当然違ってきても、給与は引き続き変わらぬまま。こうなると給与差がないということへの不満が生まれます。
今回はこのように「格差がない」ことで生まれる不満をテーマに、対策を考えてみたいと思います。
格差がないことに不満を抱く典型が、年功型昇給の傾向が強い会社で、市場価値が高い職種を担当している社員のケースです。
例えば、小売業の会社に入社。販売店に配属された社員と、通販事業部門でサイトの企画運営をしている社員。入社して5年くらいだと給与に大きな違いが生まれません。ところが通販事業部門に勤務している社員が転職サイトにエントリーしたら「現在より1.5倍の年収が可能」とオファーがあったのです。思わず、気持ちがぐらつくと同時に自分が不当な報酬で働いている気持ちになりました。
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