辞める若者は「給料横並び」にウンザリしている 大企業の管理職世代が気づかない“異変"

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そこで人事部に「通販事業部の仕事を考えれば給与が安い気がします」と不満をぶつけたのですが「公平な給与が支払われている」と説明されただけ。でも、この説明では納得はできません。というのも通販事業部に異動した社員が別の部門に再度異動するケースは皆無。言わば、この分野の専門家として仕事をすることなります。

ところが、中途採用組で同じ仕事をしている同世代の社員は、はるかに高い給与をもらっている様子。自分のほうが中途組に劣っているのであれば納得できるかもしれませんが、むしろ自分のほうが会社に貢献していると思える状況なので同世代の販売部よりは高く、中途組と同じくらいの格差がないとモチベーションが維持できないと感じているようです。

頑張っているのに昇給に格差がないことに不満

ある大手の不動産会社のケース。入社から10年間は業績の違いがあっても昇給に格差をつけない方針のようですが、それが不満を生み出しているようでした。大きなクライアントを新規で獲得しても、ネット企業とのアライアンスを成功させても、給与は同じなのです。

そんな給与形態、以前は今ほど大ごとにはなりませんでした。その理由はお互いの給与明細を見せ合うことなんてありえなかったから。「他人に見せるべきものでない」という日本人らしい、控えめな精神が発揮されていたのでしょうか。少なくとも筆者が会社員をしていた時代には、ほとんど聞いたことがありませんでした。ところが昨今、社員同士で給与明細を見せ合う行為が平気で行われているのをたびたび見聞きします。

ちなみに外国人のいる職場では当たり前に行われており、今の20代など、若手社員の間では全般的に行われるようになってきたと言われています。ネット上でもお互いの給与明細を見せ合い「自分よりもらっている」などを確認する、若い社員が増えています。

個人的にはマナー的にどうか?とは思いますが、そうした慣習の変化を踏まえて、「頑張っても給与が変わらない」ことが疑問に思われ、社内外で比較検討されてしまうことは、覚悟しなければいけない時代になってきたのです。

こうして、頑張っても格差が生まれない会社では、(自称)頑張っている社員の不満が高まり、「あなたの可能性が広がります」と転職エージェントからメールが届くと、転職を検討。当面の給与が上がるオファーを受けて退職してしまうケースが増えています。

次ページいまだに「給与は一律」という企業が多い理由
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