マルイや蔦屋家電が店で商品を"売らない"ワケ リアル店舗2.0という潮流

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GUや丸井のように、リアル店舗の新たな可能性が広がっている。逆にネット販売の視点から見ると、この意味がより深く理解できる。

アマゾンは、自社サイトで評価が星4つ以上のベストセラー商品や要注目商品をそろえたリアル店舗「4-star」をアメリカで始めている。すべての商品にはネット価格とリアルタイムに連動するデジタル値札が付けられ、通常価格とプライム会員向け価格、さらに星の数とレビューも表示されている。

アマゾンは他にも、大手小売りを買収したり、無人コンビニ「Amazon Go」を試行している。さらに、日本ではファッション分野の強化を狙い、「AT TOKYO(アット・トーキョー)」というプログラムでファッションデザイナーを支援し、ファッションショーも開催した。

リアル店舗にはリアル店舗ならではの価値がある

ネット販売の覇者アマゾンがリアル店舗を志向するのは、アマゾンが「実際に商品に触れることができない」というネット販売のジレンマに突き当たっているからだ。言い換えれば、リアル店舗にはリアル店舗ならではの価値があるのだ。

かつて「王様のアイディア」という店が、日本各地の商店街にあった。1970年代、中学生だった私は横浜駅のダイヤモンド地下街にある「王様のアイディア」のショーウィンドウに張り付いて、一つひとつ熱心に見入っていたものだ。

「ナニこれ?」と思うような独自性があるアイデア商品を、ガラス張りのショーウィンドウにびっしりとポップ広告付きで並べていた。例えばこんな商品だ。

・「ごろねスコープ」。メガネにプリズムが入っていて、寝ながらテレビが見られる。
・「マジックカップ」。ジュースがシャーベットになる。肉厚のコップを冷凍庫で5時間冷やし、ジュースを入れてかき混ぜるとシャーベットになるという。
・「ブーブークッション」。座布団の下に隠し、座ると「ブー」という音が出る。
・当時としては超小型のラジオ。スパイになった気分を味わえる。

実際には買って1回使うと、その後はまず使わないものばかり。しかし、ワクワクして眺めていた。一方で、商品を作る側からすると、本当はずっと使ってほしいはず。商品開発はなかなか難しいものだ。残念ながらいろいろな事情があったようで、2007年には「王様のアイディア」は全店閉鎖されてしまった。

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