マルイや蔦屋家電が店で商品を"売らない"ワケ リアル店舗2.0という潮流

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長い目で見ると、実店舗売り上げは下がり、ネット販売の売り上げが伸びていくのは確実だ。とはいえ、実店舗にも大きな役割がある。例えば、私はアップル商品が好きだが、アップルが新商品を発売してもすぐにはネットで注文しない。実際にアップルストアで実物を触ったうえで、気に入ったらネットで買う。

このように、実店舗で商品を試してからネットで買う人は多い。今や「安いものはネットで即買い。こだわり品は、買う前に店舗で確認」という行動が生まれたのだ。

デジタルを前提に、リアルの店舗を考える必要がある

丸井も企業から「実店舗をショールームのように使いたい」という要望を受けていたという。これまで実店舗は「競合するデジタルの世界に、リアルの店舗でどう勝つか?」を考えていた。しかし、今やデジタルは当たり前。デジタルを前提に、リアルの店舗を考える必要がある、ということだ。

そこで、丸井はさらなる変革を狙って、「デジタル・ネイティブ・ストア」というコンセプトを生み出した。

実店舗では商品を売らない。ネット販売を前提に、商品体験と顧客が集まるコミュニティーの場を提供することに特化する。

店舗の評価基準も変わる。百貨店型の「売り上げ・粗利」や、ショッピングセンター型の「家賃収入」を追求するかわりに、客数を増やして質の高い顧客体験を提供し、テナント企業の成約率・客単価・継続率を上げることで、そのお客が将来にわたってもたらす利益、つまり「顧客生涯価値」を最大化することを追求する。実店舗は付加価値提供の場になる、ということだ。

2014年から5年かけて「ショッピングセンター型」に変革した丸井は、さらに「デジタル・ネイティブ・ストア」へ変革の真っ最中だ。

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