マルイや蔦屋家電が店で商品を"売らない"ワケ リアル店舗2.0という潮流
丸井も、別のアプローチでリアル店舗の可能性を広げている。
丸井と言えば、かつては「ヤングファッションの店」。駅前の一等地に次々と出店し、「駅のソバの丸井」というキャッチコピーでテレビCMを大量に流し、「DCブランドブーム」を生み出し、アパレルショップを展開して売りまくった。
しかし、今の丸井は、大きく変わっている。例えば、新宿マルイアネックスの3階には電子ペン大手のワコム直営店がある。ここでは商品は買えない。電子ペンを体験できるだけだ。商品はネット販売か他店で買う。接客しているのは丸井の従業員だ。ワコムから委託されて、丸井の従業員がこの店を運営している。
新宿マルイ1階にはアップル新宿がある。ここもアップル商品の体験に特化した店だ。
いずれの店も、人の往来が激しい大通りに面する低層階。いわば一等地。多くの百貨店は、1階に高級ブランドや高価な化粧品の店を入れて売り上げの最大化を図っている。
マルイではすでに「商品を売っていない」!
丸井はこの一等地で、なんと商品を売っていないのである。丸井は、店の売り上げにこだわるのをやめたのだ。しかし、新宿マルイは大勢のお客で賑わっている。
かつての丸井は、売り上げと粗利を徹底的に追求する百貨店モデルだった。しかし、社会が豊かになると、衣食住の豊かさだけを追求した百貨店モデルは限界だ。丸井が得意なアパレルだけでは、もはや売れなくなったのである。
そこで、2014年5月、丸井は戦略を大転換し、「駅前の一等地」という強みを生かして有力テナントを誘致することにした。「商品売り上げを追求する」百貨店モデルから、「テナントの家賃収入を追求する」ショッピングセンター化への切り替えを決断したのである。
2019年には、当初計画していた全店舗が、家賃収入型に切り替わった。アパレルの店舗面積は44%から29%に減る一方、顧客の要望が多かった飲食・サービスの店舗面積は18%から29%に拡大。結果、2014年から2019年の5年間で、入店客は1.8億人から2.1億人と17%増。買い上げ客も0.8億人から1億人と25%増。店はにぎわうようになった。
しかし、デジタル化の大波が本格的に襲ってくると、丸井は「ショッピングセンター化だけでもまだ不十分だ」と考えた。
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