マルイや蔦屋家電が店で商品を"売らない"ワケ リアル店舗2.0という潮流

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2019年4月、蔦屋家電は「蔦屋家電+」を二子玉川にオープンした。例えば今年の夏に置いてあったのはこんな商品。実際に触ることもでき、商品の一部は購入もできる。

・歌詞を読み込み、曲調に合わせてフォントや見せ方を変えて表示するスピーカー。これまでに味わったことがない音楽体験ができるという。16万5000円
・留守番中の愛猫がどうしているのかが、外出先のスマホでわかる猫の首輪。猫を20年飼育する猫好きの技術者が開発したという。1万4800円
・食パンを密封して焼けるトースター。表面はサクサクだが、生トーストのようなやわらかな焼き上がりを実現するという。2万7000円
・生ごみ減量乾燥機。生ごみから水分を奪い乾燥させることで、臭いを消し、ゴミ袋を軽くし、コバエも湧かなくなる。約2万円
・世界最小ワイヤレスイヤホン。1.3g。音楽を聴く機能以外はすべて排除したという。こちらも約2万円

「欲しいなぁ」という商品もあれば、「面白そうだけど、本当に使うのかな」という商品もある。いわば「大人版・王様のアイディア」だ。

蔦屋家電+の意外な「儲ける仕組み」とは

実は蔦屋家電+は、マーケティング調査目的のショーウィンドウなのだ。

新商品が売れるかどうかは、実際に商品を出してみないとわからない。現代では、ニーズが非常に細分化している。だから思いっきり消費者のニーズに特化しないと、商品は売れない。しかし、大きく外すことも多い。商品を実際に出してみないと、これはわからない。メーカーにとっては、大きなジレンマである。蔦屋家電+は、こんなメーカーのジレンマに応える店なのだ。

蔦屋家電+で製品を展示するメーカーは、1区画を月額20万円で契約する。全部で30区画あるので、蔦屋には月600万円の売り上げが入る。坪当たりの売り上げは通常の家電店よりも高いという。ここでの商品売り上げは、すべてメーカーの取り分になる。

蔦屋家電+の店員は、売り上げノルマを一切持たない。リアルなお客に接して、悩みやニーズを引き出すことが仕事だ。商品を説明し、会話から顧客ニーズを巧みに引き出していく。ネット販売ではこんなことはわからない。さらに、店に設置しているAIカメラを使った分析データや来店客のマーケティングデータを得て、メーカーと共有している。

これらは、新商品が売れるかどうかを判断したいメーカーにとって、喉から手が出るほど欲しい貴重なマーケティングデータだ。こうして、メーカーは未発表製品の市場性を判断できるのだ。

プライバシーが気になるが、カメラの画像データからは特徴を示すデータが抽出され、「女性・30代」「商品A:滞在時間10秒」といった属性データだけが保存されるという。

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