文句もまずは受け入れてアイデアを足せば、ワクワクに変わる――。寒い風呂、大量の虫が出る床、ボロの畳。“すてきな要素”はない。だがまさに「ないなら作れ」で、そういう“なにもない”状態を目の当たりにしたからこそ、子どもたちから「こうなったらいいな」という提案が次々と出てきた。
そして、佐藤家では何度か「ワクワク暮らし会議」が開かれ、その作戦会議で、描いた理想の家を実際に自分たちで作ってみよう、ということになった。
そう、佐藤家の会議は話し合うだけでは終わらない。それを具体的に「実践・体験」に落とし込んでこそ完結する。セルフリフォームも、同じだった。
家族4人で家を1年かけてリフォーム
佐藤家の家族会議の原点は、陽平さんの大学時代の「探検部」の活動にさかのぼる。
まずはどこを探検したいか、そして危険を伴う自然に向き合うために、何を準備し、どう行動するか仲間たちとは繰り返し話し合う。さまざまな価値観や意見がぶつかり、決まったことを、実際に行動していく。うまくいかなければまた話し合い軌道修正する。そうした繰り返しが、何にも代えがたい「経験」につながった。
「僕は子どもにはいろんなことを経験させたい、と思っていて。自分で考えたことを伝えて、それを行動に移すということがいちばん大事だと思っているんです」と陽平さんは言う。「まあ、この人の場合は思ったらすぐ行動(笑)。考えると同時に行動していて、家族は必死についていってる感はありますけどね」と笑う乃予さんも、芯のところでは同じ方針だ。
大人も子どもも、答えのない答えを考え、試してみる。とはいえリフォームの知識はないので、地元の大工さんを教師役に雇い、教えてもらいながら、家族全員での工事が約1年にわたって続いた。
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