東京「煮干しラーメン」ブームの裏にある暗闘 本家・青森のご当地ラーメンが進出した事情

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一方、津軽煮干しラーメンは作りとしては基本的にあっさり系が主である。あっさりながらも煮干しのうま味と香りがしっかり感じられる奥深いスープが特徴だ。

長尾中華そばの煮干しラーメン(筆者撮影)

青森県三厩村出身で、昔から津軽煮干しラーメンを食べ続けてきた「田中商店」店主の田中剛氏はこう語る。「どんどんうま味を追求する中で油が多くなり、濃厚になっていくのは仕方のないことなのかなと思います」。

津軽煮干しラーメンの地元、青森では取材拒否の老舗店もあり、その名は広がる由もなかった。知る人ぞ知るご当地ラーメンだったのだ。各店とも、地元だけで十分やっていけるレベルであり、県外に進出してさらにお店を大きくしていく必要がなかったのである。

それもあって、都内での煮干しラーメンブームは、ご当地ラーメンとして先行したはずの「津軽」の名前も、あっさりした煮干しラーメンも広まらず、濃厚系だけが増えていく図式になっているというワケだ。

「津軽煮干しラーメン」を知ってもらいたい

長尾氏が東京進出を決めた理由はここにある。過去には、ラーメンイベントやデパートの催事などに積極的に出店し、津軽煮干しラーメンを紹介していったが、それはあくまで青森までラーメンを食べに足を運んでもらうためにやっていたことだった。

長尾中華そば店主の長尾氏(筆者撮影)

「都内で煮干しラーメンがはやるのはうれしいことですが、青森の煮干しラーメンもおいしいということをきちんと紹介したい。まずはたくさんの人に、あっさり系の青森の煮干しラーメンを知ってもらいたい」(長尾店主)

ただ、すでに濃厚系が先行している中で、あっさり系の津軽煮干しラーメンは、商売として考えるとなかなか根付くまでには時間がかかるかもしれないという見方もある。濃厚系全盛の煮干しラーメンブームの中で「津軽煮干しラーメン」がどこまで知名度を上げられるか。油が浮かない津軽煮干しラーメンはヘルシー志向の消費者には刺さりそう。そこをどれだけ訴求できるかも成功のカギを握りそうだ。

井手隊長 ラーメンライター/ミュージシャン

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いでたいちょう / Idetaicho

全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」「AERAdot.」等の連載のほか、コンテスト審査員、番組・イベントMCなどで活躍中。近年はラーメンの「1000円の壁」問題や「町中華の衰退事情」、「個人店の事業承継」など、ラーメン業界をめぐる現状を精力的に取材。テレビ・ネット番組への出演は「羽鳥慎一モーニングショー」「ABEMA的ニュースショー」「熱狂マニアさん!」「5時に夢中!」など多数。その他、ミュージシャンとして、サザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」や、昭和歌謡・オールディーズユニット「フカイデカフェ」でも活動。著書に「できる人だけが知っている 『ここだけの話』を聞く技術」(秀和システム)がある。

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