「荻窪ラーメン」50年の名店が迎えた最後の日

一代で築いた「中華三益」は淡々と幕を閉じた

荻窪ラーメンの老舗「中華 三益」(筆者撮影)

荻窪ラーメン。JR中央線、東京メトロ丸ノ内線・東西線の荻窪駅(東京都杉並区)周辺にあるラーメン店が提供しているラーメンのことだ。鰹節や煮干しなどの魚介系の和風スープに濃いめの醤油ダレを合わせたラーメンが多い。いわゆる「ご当地ラーメン」とは少し違うが、1980年代のバブル期からテレビや雑誌で特集が組まれ、「荻窪ラーメン」という名でインスタントラーメンが発売されたこともあって、全国的に名が広まった。

この連載の一覧はこちら

荻窪ラーメンのお店には、「丸長」「丸信」など信州出身の蕎麦屋からの転業が多い(「丸長」の「長」は「長野」、「丸信」の「信」は「信州」を指す)。「春木屋」は特に有名で、いずれもマスコミにも引っ張りだこの名店である。

名店「中華 三益」が50年の歴史に幕

そんな荻窪で1968年(昭和43年)創業の老舗ながら、マスコミにあまり取り上げてこられなかった名店「中華 三益」が、今年6月30日に50年の歴史に幕を閉じた。

基本的に取材を受けてこなかった(筆者撮影)

「中華 三益」は御年86歳になる店主の寺田信三さんが一代で築いてきた。1973年に一度移転をしたものの、長きにわたって荻窪の地で一貫してラーメンを提供し続けてきた。その価格はなんと1杯350円。東京に残るまさに時の止まったような空間で、常連やラーメンファンを中心に多くの人の舌と心を喜ばせてきた。基本的に取材を受けてこなかった店なのだが、筆者は2年前から取材に応じてもらっている。

寺田さんはもともと1948年から「銀座 更科」など数々の日本蕎麦の名店を渡り歩いた蕎麦職人だった。蕎麦は漆塗りの器や茹でるための釜などが非常に高価で開業資金が大きすぎるため、ラーメン店を始めることにした。親戚が荻窪に住んでいたこともあり、土地勘もあるこの地を選んだのだ。

次ページ「三益」の意味は
ビジネスの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 令和の新教養
  • コロナショックの大波紋
  • 越湖信一のスーパーカー列伝
  • コロナショック、企業の針路
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
テレワーク総点検<br>コロナで広がる働き方格差

緊急事態宣言下で当たり前になった「テレワーク」。業種や職種によって実現度合いに大差がつき、この数週間で働き方の格差が広がったといえるでしょう。在宅勤務の課題を総点検し、コロナ後の働き方を考察しました。