長尾中華そばは、2013~2014年には東京・池袋で期間限定出店をしたこともある。それも踏まえて今回の東京本格進出の裏側には、長尾氏の忸怩たる思いがある。煮干しを使ったラーメンとしては、青森のご当地ラーメンである「津軽煮干しラーメン」があるにもかかわらず、東京ではその浸透度が低いことだ。
かつての津軽では煮干しではなく「焼き干し」がよく使われていた。歴史はかなり古く、江戸時代から食べられていた「津軽そば」のダシとして使われていたそう。そこに中華麺も入れてみようといって提供されたのが「津軽煮干しラーメン」の始まりと言われている。
「濃厚系」だけが増えていく図式
日本全国のラーメン情報をレビューやランキングで紹介している「ラーメンデータベース」は、ラーメンの1ジャンルとして「煮干し」を設けていて、東京都だけでも379店舗が登録されている(2018年8月3日現在)。
現在の東京都の煮干しラーメンベスト10は以下のとおりだ。
2位 中華そば いづる(浜松町)
3位 中華ソバ 伊吹(志村坂上)
4位 すごい煮干ラーメン凪 新宿ゴールデン街店 本館(新宿)
5位 煮干しつけ麺 宮元(蒲田)
6位 麺処 晴(入谷)
7位 らぁめん小池(上北沢)
8位 さんじ(稲荷町)
9位 陽はまたのぼる(綾瀬)
10位 亀戸煮干中華蕎麦 つきひ(亀戸)
実は火付け役の1人ともいうべき、「すごい煮干ラーメン凪」の生田智志店主が、開業を志し、各地のご当地ラーメンの食べ歩きを進める中で影響を受けたのが「津軽煮干しラーメン」だった。
「衝撃でしたね。ダシを下支えする存在だと思っていた煮干しが前面に出て、すばらしいうま味と香りを放っていました。煮干しにこんな使い方があるのかと知り、試作を重ねてできたのが今の『凪』のすごい煮干ラーメンです」。生田店主は明かす。
煮干しを丸ごと食べたときのうま味や香りをラーメンでも表現、「凪」の煮干ラーメンは瞬く間に一躍スターダムに躍り出た。「煮干しは化学調味料を使わなくてもしっかりとしたうま味が出て、油を使わずともおいしいラーメンが作れます」(生田店主)。
同じように津軽煮干しラーメンにヒントを得た都内のラーメン店は数多いとされているが、これらの多くは、「濃厚系」が圧倒的だ。
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