日本には「根拠なき自信家」が足りない 経済財政白書も一喝?

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ついに、景気回復が本格化してきました。甘利経済再生担当相が閣議に提出した2013年度の経済財政白書では、消費者、企業マインドが改善し、景気が持ち直し「長引くデフレから反転する兆しが表れている」と指摘。久々に明るい内容となりました。

一方で、この白書にはちょっと気になるコメントが。それは日本経済の成長力を高めるため、

「企業の活力を引き出し、企業家が“アニマルスピリット(野心的な意欲)”を発揮するようにしていかなければならない」

と添えられているのです。日本企業の競争力は欧米の企業と比較して劣っており、競争力を強化する必要があると指摘しています。

確かに日本は「横並び志向」で製品の差別化が進まないうえ、非効率的な企業もめったに市場から退場しません。長い経済の低迷に慣れて、「果敢に」攻めるスタンスを忘れてしまったのかもしれません。そんな企業に対して「喝!」のメッセージが白書に込められているのでしょう。

ケインズも指摘した「根拠なき強気」の必要性

それにしても、アニマルスピリットとは? 実は、かの有名な経済学者ケインズが「雇傭・利子および貨幣の一般理論」の中で使用した用語です。「血気」「野心的意欲」「動物的な衝動」などと訳されます。経済活動の多くは合理的動機に基づいて行われるが、将来の収益を期待して事業を拡大しようとする、

《合理的には説明できない不確定な心理》

によって、成果が左右されることがあると、ケインズは指摘します。別の言い方をすれば根拠なき強気。特に起業や、事業における投資においては根拠より、重要とされるものです。ところが最近は「草食系」、スマートで冷静に分析して行動する人ばかり。根拠なき強気の持ち主に遭遇することはめったにありません。

一方で日本も高度経済成長期(1970年代まで)は、アニマルスピリットを抱きやすい状況だったのかもしれません。新進気鋭のベンチャー企業や世界を席巻する新製品が次々と登場したもの。ところが、バブル崩壊、リーマンショック、震災などを経て、野心的な意欲は大幅に減退しています。

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