チームが大きな成果を出せるかどうかは、リーダーにかかっていると言われることが多い。
だが、人間とはミスを犯すものだし、つねに正しい人などいない。リーダーが間違いそうになったとき、ミスを的確に指摘し、よりよい案を進言してくれる”強い部下”がいるかどうか。それが、チームが飛躍するか、危機を回避できるかを左右するのではないだろうか。
危機と言えば、その最たる例が航空機事故だ。トラブルの兆候を見つけたクルーの意見を機長が聞かなかった、あるいは進言できる関係でなかったために事故が起こった例が過去に相次いだ。最近のアシアナ航空機事故でも、機長と副機長の意思疎通がうまくいかなかったことが事故の一因ではないかという指摘もある。
人命にかかわる例でなくても、上司の経営判断に対して現場を知る部下が進言しなかったために誤った判断が行われ、重大な失敗につながることは多い。
こうした失敗を避けるために、NASAなどではリーダーに従う部下、つまりフォロワが“適切に”機能することが非常に重視されてきた。
実際、宇宙飛行士訓練では、リーダーシップ訓練と並んでフォロワシップ訓練が徹底的に行われる。そして「フォロワシップの達人」と国内外で高く評価されるのが古川聡宇宙飛行士だ。
古川飛行士は2011年に国際宇宙ステーション(ISS)に165日間滞在した。その宇宙滞在中、かつてないほど深刻なトラブルが続いたことはあまり知られていない。
宇宙ゴミがISS史上、最短距離まで接近して、緊急帰還機に避難した。またロシア貨物船が打ち上げに失敗、ISSが初めて無人になる可能性が浮上し、準備に追われた。しかし古川飛行士はどんな場面でも笑顔を絶やさない。安定した抜群のフォロワシップでチームを支え、危機を乗り越えた。NASA上層部から「サトシはすばらしい」と、名指しで高く評価された。
訓練時代から実際の宇宙飛行まで古川飛行士を見守ったJAXAの山口孝夫さんは「リーダーの指示が不明確なときは、必ず聞き返してミスを未然に防ぐ。与えられた仕事を最後までやり遂げる責任感が強く、どんな時も笑顔でチームの雰囲気をよい方向に導き、結束力を高める」とそのフォロワシップ力を絶賛する。
フォロワシップの極意はどこにあるのか、どう鍛えるのか、古川飛行士に聞いた。
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