2年目で肩叩き?エリート弁護士の出世競争 4大事務所は9時ー5時(もちろんAM)勤務が当然

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辞めてしまうとかなり悲惨…

この時期に大事務所を辞めるとかなり悲惨だ。大事務所は大企業相手の法務であり、しかも分業が徹底しているので、ごく限られたことしか経験していない。

一方、次回で取り上げるマチ弁事務所では、中小企業相手の法務が中心で、大企業相手の法務の知識はほとんど役に立たない。マチ弁事務所は、最初の2~3年で民事から刑事までかなり幅広い経験を積ませる。したがって大事務所の2~3年生をありがたがって雇ってはくれない。

2~3年前の過払い返還請求ブーム真っ盛りの時期には、大事務所を2~3年程度で追い出された若手が、債務整理や過払い請求を中心業務に据えた事務所を立ち上げるケースが多かったが、この分野はまさにマチ弁の領域なので、マチ弁系の弁護士の評判はさんざんだ。

次のターニングポイントは5~6年目に来る海外留学のタイミングだ。留学費用を出してもらえず、送り出されたまま帰ってこなくていい、という扱いを受ける弁護士もいれば、留学費用も事務所負担なら留学期間中も一定のサラリーを出してもらえて、将来を約束される弁護士もいる。

その点、小規模なブティック事務所に雇ってもらえると、うまくすれば丁寧に育成してもらえるが、何しろ数年に1人採用するかどうかという狭き門だ。ボス弁や先輩弁護士との相性が悪いと、小規模な事務所では致命的になることもある。

大事務所では、入所から数年間は下働きなので、エクセルやワードでの作業の毎日だ。法律をさわる機会はほとんどなく、判決文を読むことも訴状を書くことも、そして先輩のかばん持ちとしてすら法廷に立つ機会はない。

一般的には弁護士は3年目ともなれば、ひととおりの経験をしているのが普通とされるので、2年も3年も大事務所で下働きをしていると、もはや辞めるという選択肢がなくなる。そのまま頑張ってパートナーから目をかけられ、引き上げられればいいが、パートナーも人の子。好き嫌いは当然あり、引き上げてもらえなければ悲惨だ。

このため、1年程度で大事務所を離れ、中規模の有力事務所への移籍を選択する有能な若手弁護士は増加傾向にある。

ブル弁への道はかくも厳しいのである。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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