弁護士はどんな小さな事務所でも、事務所が弁護士法人であったとしても、基本的に従業員ではない。新人といえども法的な身分は自営業者である。実際に雇用保険や労働基準法が適用されるかどうかは、雇用契約の有無や勤務の実態などで判断するのだが、所属していた弁護士事務所を誰か弁護士が訴えて司法判断を仰いでみないと、司法がどう判断するのかわからない。
もとより、そんなことをしても弁護士としてのスキルアップには何の役にも立たない。いずれにしても長時間労働に耐えられないと思うなら、4大事務所を目指すべきではない。
一般の企業と比較しても、弁護士の世界は働き方に対する許容度が広い。9時-5時生活を覚悟しなければならないのは4大事務所プラス一部の大事務所くらいだ。
マチ弁でもブル弁でも、総じて土日も働いている弁護士は多いが、平日に毎日3~4時間睡眠などという生活をしている弁護士は、決して多数派ではない。
4大事務所を健康に不安を感じて辞める若手は一定数いるが、長時間労働を理由に辞めても、ほかの事務所に移籍するうえでそれ自体が障害になることはほとんどない。
入所後こそ熾烈な競争が待ち構えている4大事務所
大事務所はアソシエイトと呼ばれる弁護士と、パートナーと呼ばれるマネジメント層の弁護士で構成されている。パートナーの構造については前号で取り上げたので、今回はアソシエイトについて取り上げる。
入所すると、まずジュニアアソシエイトからスタートし、数年でシニアアソシエイトになる。アソシエイトは顧客を自力で開拓し、自力で報酬を稼ぐことは基本的には求められておらず、もっぱらパートナーの下で下働きをやりながら修行を積む。
中規模以下の事務所だと、パートナーの下働きもやれば国選弁護もやったりと、入所からさほど時間を置かない時期から、徐々にではあるが自力でのクライアント獲得も求められるが、大事務所の新人はパートナーの下請け仕事をこなすだけで精いっぱいだ。
前号で取り上げたとおり、4大事務所では、森・濱田松本以外はパートナーの構造も重層構造になっていて、シニアパートナーの下にジュニアパートナーがおり、その下にシニアアソシエイト、さらにその下にジュニアアソシエイトという形で組織が組まれている。各シニアパートナーが親分で、その下に子分が連なる構造だ。
大事務所では手間暇のかかる作業をアソシエイトに担当させ、クライアントにはその作業にかかった時間数×時間単価×人数で報酬を請求する。いわゆるタイムチャージである。
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