経営者はひとりの「聞き役」を持っておらんといかんな。経営上いろいろな問題や悩みがある。そういうことを聞いてくれる人やな。そういう人がおるかどうか。
誰でもそうやろうけど、そう毎日が楽しく愉快なときばかりではない。経営者とて、普通の人間やから面白くないとき、つらいときもある。だからと言うて、周囲の人に当たり散らしたり、愚痴をこぼしたりということでは、大勢の部下の人たち、周囲の人たちが気の毒やな。だから少しぐらいつらいこと、厳しいことがあっても、経営者は、指導者なんやから、そういうことをぐっとのみ込んで我慢せんといかんことがある。というよりそういう場合のほうが多いわけや。
秀吉には三成がいた
しかし、それでも我慢できん、どうにも内からこみ上げてくる激情は抑えがたい、そういうときもある。そういうときにその「聞き役」やな、その人がおれば、思いきりそのひとに腹の立つこと、思い悩むこと、なんでもかんでも話しすることができるわけや。話しすれば、おおかたパーッと発散して、まあ、気を取り直して、これからさらに発奮しようかということになる。
秀吉な、豊臣秀吉。彼が、なんで天下をとることができたかというと、石田三成がいたからやと、わしは思うんや。
秀吉は豪放磊落(らいらく)な人やったとか、ほがらかで楽観的な人やったとか言われとるけどな、いくらそういう秀吉でも、人間や。腹を立てたいときもあれば、愚痴をこぼしたいときもある。そういう怒りや愚痴を三成が受け止めたんやな。そうですか、なるほど、とか言うてね。三成が聞いてやった。
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