言うべきことがあっても言わない。大抵がそういうもんやな。それが人情といえば人情やけどね。そこをな、経営者も上の人も、よう心得ておかんといかん。
それはけしからん。言うべきことも言わんというのは、部下としてけしからんと、まあ、そういうことも言えるかもしれんが、普通の人は、そういう姿やな。それをけしからんと言うてみたところで、それは言うほうが無理、言われるほうがかわいそうというもんや。
だからこそ、経営者は自分に「ハッキリとものを言ってくれる人」「直言してくれる人」を大事にせんといかんのや。あんた、こういうことに気をつけないとあきませんよ、こういうことをよく考えんとだめですよ、このごろ少し見方が狭いですよ、というようなことを言ってくれる。そういう人を大事にする。意識して大事にするということや。
ご意見番は多いほどいい
確かにそういうことを言われて、その大将も、いい気持ちはせんわね。あんた、だめですよと言われて、それで喜べるということは、それはなかなかできんもんや。
しかし、それを超えて喜ばんといかん。大久保彦左衛門? ご意見番か? まあ、そうやな。そういう人材を何人持っておるのか。多ければ多いほどええな。
そういう人の話や意見をジッと聞いておく。なるほど、なるほどと聞いておく。それは直言やからね。本来、経営者みずからが思い考えつかんといかんことを、あえて、そういうふうに言ってくれるわけやから、だから、そういう部下を大事にせんといかん。喜ばんといかん、感謝せんといかんということになるんや。
それをね、腹を立てる。おれは、この会社でいちばん偉いんだ、そのおれに意見するとはなにごとだと怒る。愚かなことやね。経営者にとって大事なことは、自分のメンツより、会社の発展やないのか。そういう人も、「聞き役」の人と同じように、なかなか求めて得られるもんではない。
これも運やな。こういう人が自分の周辺に出てくるというのも、その経営者にとって運があるかないか、ということやね。だからな、自分に「直言してくれる人」、ときとして「厳しいことを言ってくれる人」を大事にする。それが会社を発展させるコツでもあるわけや。なかなか難しいけどな。けど、わしは、できるだけ、そう心掛けてきたな。
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