イノベーションは「ものづくり」以外にも
イノベーターズ・ジレンマは、それゆえ、多くの業界に応用して考えることができる。まずは、自らの商材やサービスを可能にしているバリュー・ネットワークを考える。そのうえで、そのバリュー・ネットワークが破壊されたり代替される可能性を探り出す。
用途のわからない新技術もあれば、現状のサービスに満足していない顧客もいるだろう。そして、少しでもその芽が見えてきたのであれば、新規事業を立ち上げるなど、早めに手を打つというわけである。
昨今、日本企業でも、ものづくりだけでなく、より広い視点からのビジネスが模索されている。けれどもそれは、各企業独自のものづくりに合うデザインやマーケティングが必要だ、という話ではない。そのくらいは、予算次第である。そうではなく、ものの価値を支えるバリュー・ネットワークに目を向け、そのメリットとデメリットに注目しながら戦略を構築するという思考が求められているのである。
【初出:2013.6.22「週刊東洋経済(会社を変える会議)】
(担当者通信欄)
『イノベーションのジレンマ』は、ビジネスマンの必読書として発売以来読まれてきているロングセラーです。同じクリステンセンの新刊『C.クリステンセン経営論』の発売に合わせて、大型書店で一緒に並べてあるのをしばしば見かけます。クリステンセンの著作は、ほかにも『イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ』、『イノベーションのDNA』など共著を含め意外に多作で、邦訳版も充実しています。
「イノベーション」でなく原題では「イノベーター」であるという指摘、本から受け取るイメージも随分変わってきます。翻訳書の場合には、日本の出版社が大きくタイトルを変更して、より日本の読者の興味をひくものするべく手を入れることもあります。原題に注目してみるのも面白いかもしれません。
ちなみに、出版業界はそれほど大きな業界ではありませんが、電子書籍などの普及で、新たなバリュー・ネットワークができつつある業界でもあります。今後も面白い変化の日々が続きそうです。
さて、水越康介先生の「理論+リアルのマーケティング」、最新記事は2013年7月16日(火)発売の「週刊東洋経済(特集は、マッキンゼー学校 最強メソッド&全人脈)」に掲載です!
【コトラーと「交換」の発明、双方向のマーケティング】
マーケティングを勉強したことのある方なら、この名前を聞いたことがあるかもしれません。第一人者フィリップ・コトラー氏(82歳!)が先月来日しました。マーケティングを普及させ、そして「交換」による新しいマーケティングを発明した功績を考えます。
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