今ある製品を取り巻く「しがらみ」からの脱却を
バリュー・ネットワークでは、一つの製品は、ほかの製品やサービスによって初めて価値付けられると考える。自動車に価値があるのは、自動車自体が優れているからではなく、街にアスファルトの道路が敷き詰められ、至る所にガソリンスタンドが設置され、交通ルールがしっかりと決まっているからである。
自動車それ自体も、エンジンがあり、ブレーキシステムがあり、タイヤがあり、さらには運転者がいる。それぞれの機能は分けられ、自動車を取り巻く大きなネットワークが形成されているのだ。これらの開発と組み合わせの中で、自動車という価値が実現している。
イノベーターは、ノートパソコンメーカーが小さなHDを買いたいことに気づくかもしれない。しかし、小さなHDに力を注ぐことは、今ある大きなHDが形成しているバリュー・ネットワークそのものを作り替え、場合によっては破壊することを意味する。
必要なデバイスも、それを作ってくれる協力企業も変わるだろう。その意思決定は、非常に大きなリスクを孕む。だからこそ、イノベーターはジレンマに直面するのである。
技術がバリュー・ネットワークに埋め込まれて生じるのは、二者択一の問題なのだ。大事なことはほかにもありますよ、というほど簡単なものではない。
あえて一つの解を提示するとすれば、思い切って製品や組織を分けてしまうことしかない。同じ製品や組織で複数セグメントに対応しようとするからジレンマに陥るのである。たとえば小さなHDを新規事業として切り出すことができるのならば、当初のジレンマはずいぶんと緩和されることになる。新規事業部は、ゼロからバリュー・ネットワークを築いていけばいい。
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