インターネットやソーシャルネットワークの人気で盛り上がるテクノロジー業界だが、シリコンバレーには古くから流れるモノづくりの伝統がある。最先端のテクノロジーを用いて人々が使えるモノを生み出し、それがいずれ人々の生活や社会を変えてしまうようなインパクトを持つ。
スティーブ・ジョブズが1976年のアップル創設以来、行ってきたことがそうだし、さらにさかのぼれば、ヒューレットパッカードがやったこともそうだった。コンピュータを自分で作ってしまおうと考える人は、今もたくさんいる。トニー・ファデルは、そんなシリコンバレーの正統な流れをくむ一人である。
ジョブズが見出した才能
ファデルは、何と言ってもまず「iPodの父」として知られる人物だ。彼は2001年にアップルに加わったが、それ以前からデジタル音楽とデバイスを結び付けた何かができないかと考えていた。
最初、そのアイデアを基に自分で会社を興して失敗。それならば、どこかの企業の中で開発を行おうと、数々のテクノロジー企業のドアをノックした。いくつかの会社を訪ね歩いたが、彼の言い分を聞いて、音楽をまったく新しい方法で体験する未来を直感的に想像したのが、スティーブ・ジョブズだったのだ。
フラッシュドライブとメモリを用いて、デジタル音楽ファイルをスピーディにダウンロードして保存できる技術を、小型のデバイスとして作り上げる。ジョブズは、ファデルのアイデアを聞いたとき、そこに音楽と人々の心を変えるものがあることを確信したのだろう。
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