インターネットに次ぐ新しい産業はロボットとも言われる。すでに、その気配は社会に満ちている。製造工場では、人間の作業員と並んで単純な仕事を正確に続けるロボットが導入されている。グーグルの自律走行車も話題になっているが、これもロボットの一種だ。そして、お掃除ロボットの「ルンバ」。近年、大人気を呼んだ新製品のひとつとして、ルンバは輝くロボットである。
そのルンバを開発したのが、コリン・アングルが共同創設したアイロボット社だ。
アイロボットの創設は1990年。その当時、アングルはまだ22歳だった。ロボット会社も珍しいが、20代初めで会社を作るというのも、今ほどなかったことである。けれどもアングルは、面白いロボットを作りたいという夢に導かれて起業した。一緒にこの無謀な夢に取り組んだのは、マサチューセッツ工科大学教授(当時)でロボット学者として有名なロドニー・ブルックスと、同じ研究室出身の女子学生だった。
福島原発でも活躍したあのロボット
アイロボットが最初に開発したのは、「ゲンギス」という名前の宇宙探索用ロボットである。その後、地雷撤去ロボットを経て、「パックボット」が生まれた。パックボットは、小さな戦車のキャタピラーのようなものの上に、伸びるアームが付いていて、その先にカメラが装備されたロボットである。遠隔地点からの操作が可能で、危険で人間が入り込めないような場所に侵入して、状況をモニターする。
福島第一原発事故の直後に、誰も立ち入れない原子炉建屋に入ったのは、このパックボットだった。また、イラクやアフガニスタンで、兵士に代わって洞窟を探索したり、爆弾を撤去したりしたのも、パックボットだ。それ以前では、9.11の際にワールドトレードセンターの跡地で捜索のために利用されている。
アイロボットは、それまでこうした軍事用ロボットの開発を手掛けてきたものの、その存在はあまり知られることがなかった。それが、2002年に発表したルンバによって世界的に有名な会社になるのだ。
「会社がやっていけるようになるまで、こんなに長い時間がかかるとは思っていませんでした」と、アングルはあるインタビューで語っている。毎月、どうにか社員に給料を支払っていたが、払った後は次の給料日までヒヤヒヤの状態。そして、とうとう2002年には初めて社員を解雇しなければならなくなった。
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