ジレンマは「イノベーター」にこそあり
バリュー・ネットワークという「しがらみ」からの脱却を

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顧客の声を聴いたのが間違いだった?

著者:水越康介(経営学者、首都大学東京准教授) 撮影:今井康一

日本でも高く評価されているビジネス書の一つに、『イノベーションのジレンマ』がある。タイトルだけ何となく知っていたり、買ったものの、意外と硬い文章に、途中までしか読めていなかったりという方も多いのではないだろうか。

先日、ある研究会でも紹介され、「技術(革新)には限界があるので、デザインやマーケティングも大事なのですよ」という指摘があった。なるほど、そういう理解もできるが、それだけだと随分と平凡な話になってしまうように感じる。

邦訳版は確かに『イノベーションのジレンマ』であり、イノベーション、つまり技術革新そのものに何かしらのジレンマがある印象を受ける。その克服のために、技術以外の要素が必要になるというわけだ。

けれども、この本の原題には、実は「イノベーターズ・ジレンマ」とある。問題視されるのは、イノベーションを生かすことのできないイノベーター、人や組織なのである。

どうして、イノベーターに問題が生まれるのか。本書によれば、その理由は、顧客の声を聴いたからである。これが多くの人々に驚きを与え、また共感を集めた。イノベーターたちは、そのイノベーションに意味があるかどうか、価値があるかどうかを顧客に尋ねる。すると顧客は言う。そういう新製品はいらない、と。

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