正社員の特権が「非正規貧困化」の根本原因だ 「雇用身分格差」を放置することは許されない

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企業が社員に支払える給料には、限りがあるはずです(写真:xiangtao/PIXTA)

労働法(主に企業側)専門弁護士の倉重公太朗と申します。現在、安倍政権において、働き方改革などが重点テーマとして挙げられています。日本経済を取り巻く環境の激変、グローバル化、人口減、女性活躍、ダイバーシティなど、好むと好まざるとにかかわらず、「働き方」の変革が迫られていますが、現実を踏まえていない議論も多く見られるところです。

日本の雇用社会はどうあるべきなのか。本連載では、経営者側にも労働者側にも寄りすぎることなく、できるかぎり客観的な視点・データから、日本における雇用の何が問題なのかについて整理しつつ、分析していきたいと思います。

不本意に非正規で働く人たち

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第1回である今回は、不本意に「非正規」として働く労働者が貧困化する本質的な理由について考えます。2015年時点において、若年層(34歳未満)の非正規雇用者は521万人、本来正社員として働きたいのに、正社員になれないため非正規雇用で働いている「不本意非正規」の割合は、25~34歳で最も高く、26.5%にも上ります。

「非正規雇用」から連想されるイメージは、単に「賃金が低い」というものでしょうか? 確かに、非正規雇用と正社員の年収差は約300万円。その差は大きいといえるでしょう。しかし、「非正規雇用」には賃金格差だけではなく、生涯にわたりさまざまなデメリットがあるのです。厚生労働省も非正規雇用対策に乗り出していますが、一向に解決していませんし、する気配もありません。

なぜ、非正規雇用問題が解決しないのか。その本当の理由は、日本型「正社員」の問題のシワ寄せを食らっているからです。

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