「最安値でトクする」があまりに難しくなった訳 リセールも普及してますます複雑に

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私たちが「最安値を変えない」のはなぜなのでしょうか(写真:Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

「金」が史上最高値を更新したという。コロナ不安の中、金価格は上昇を続け、「去年買っておけば」と悔しがっている個人投資家も多いのではないか。

しかし、不思議に金は価格が上がれば欲しくなる。安値更新中のときよりもだ。本来は安いタイミングに買うのがベストチョイスのはずだが、人間の感情はなかなか複雑で、特に”高級品”の買い方は、普段使う日常品とは異なる。それは、価格と価値が一致しているととらえてしまうからだ。

以前、「サイゼリヤ1円値上げが与える想定外の衝撃」という記事の中で、「ブランド品や不動産などの場合、一見同じグレードに見えるなら、安いものより高いほうがなぜか安心する」「買おうと思っているマンションのうち、最安を選ぶのにはやや勇気がいる。基準となる価格より、ちょっと高い方が安心するから不思議な心理だ」と書いたところ、これには同意しかねるという反応を頂戴した。購入するなら安いほうがいいに決まっている、理屈が合わないと感じられたのだと思う。

その理由は端折ったため、説明不足だったと反省した。どんなものであれ、払うお金が少ないにこしたことはない。しかし、一部のものに関してはなぜ、高いほうを選びたくなるのか。その消費者心理について、改めて取り上げてみよう。

松・竹・梅で、最安の「梅」が選べないのはなぜか

行動経済学でおなじみの「松竹梅の法則」はご存じだろう。定食屋に入ったところ、梅980円、竹1200円のセットがあった。普段なら安い梅を選ぶ人が、そこにもう一段上の松1500円定食が並んでいると、つい真ん中の竹1200円にしてしまうという消費者心理をいう。価格が異なる選択肢が3つあると、最安を選ぶのはケチな気がしてできず、ちょうどいい落としどころとして真ん中にする。それが、普段払っている食事代よりも高い金額であったとしてもだ。

これは「極端の回避性」と言われ、最安・最高のどちらかに位置するものを選んだ結果ソンをしたらどうしよう、と思い、避けようとする行動だ。最高のものは、その金額を出すほど本当に価値があるか測りかねるし、最安のほうは実はかなりしょぼいかもしれない。人はとにかく、ソンすることが嫌で仕方ない。そのため、まあ無難だろうと思われる真ん中をとるわけだ。

高額かつ、不動産や高級品など資産価値を有するものの場合、よりこの心理は強くなるだろう。つけられた価格は物件自体の価値を裏付けており、安いということは価値が低いとみなされるからだ。

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