労働時間の把握が自己申告では不十分な理由 法改正で「客観的な方法」での管理が必須に

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働いた時間の把握には、タイムカードなどの「客観的な方法」が必要とされます(saki/PIXTA)

今年の4月に施行された働き方改革関連法のメインは労働時間の上限規制、有休5日の取得義務という労働基準法(労基法)の改正が主な内容でした。その他細かい改正はいろいろとあるのですが、非常に影響が大きいのが労働安全衛生法の改正です。

労働安全衛生法(安衛法)とは、労働者の健康・安全衛生を確保するためにさまざまな規定を設けている法律で、例えば入社時の健康診断や毎年行う定期健康診断、ストレスチェック制度などを定めています。

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今回、労働安全衛生法およびこれに基づく規則の改正により、新たに「労働時間の状況」について客観的に把握しなければならないという義務が中小企業を含むすべての企業に課せられることになりました。

この労働時間の状況把握義務はあまり知られていませんが、思いのほか重要です。人事労務担当者のみならず、部下を持つ管理職の方であれば、この内容を知っておかないと「管理が行き届いていない」と後に責められてしまうリスクがあります。また、パソコンを使って作業をしている人はすべて関係ある話になります。

労働時間の「状況」は労働時間そのものではない

今回の安衛法改正による労働時間状況把握義務の内容は、「すべての労働者」の「労働時間の状況」を「客観的な方法」により把握する必要があるという点がポイントです。

「すべての労働者」には管理監督者、パート、アルバイト、契約社員を含みます。とくに、部長や課長などの管理監督者については、役職がつく代わりに残業代はなしというケースも多いことから、これまで厳密な労働時間の管理をしてこなかった会社が多かったと思いますので、これからどのように管理をしていくのかが重要になります。

ここで注意すべきは、「労働時間の状況」とは、労働時間そのものではないことです。「労働時間」というと、それが残業代を計算する基礎になったり、残業時間や休日労働に関する労使間の取り決め「36協定」の上限時間か否かなどの指標となるものですが、今回の安衛法の義務についてはわざわざ労働時間の「状況」という言葉を付けているのです。

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