「労働時間の状況」とは、労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、労務を提供しうる状態にあったかの指標となるものとされており、労基法の労働時間とは概念が異なるのです。つまり、労務を提供「しうる」時間のことであり、実際には「在社時間」などに近い概念です。
そして、「客観的な方法」とは、タイムカード・ICカードによるオフィスの入退出時間記録、パソコンのログオン/オフの時間などによる把握を原則としています。
つまり「客観的」とは、自らの意思が入らずに自動的に記録されるという意味になりますので、自分で入力したり修正できたりするタイプの勤怠管理ではそれが紙であろうが、社内システムであろうが、ウェブ上のクラウドシステムであろうが、いずれも自己申告扱いということになります。
ちなみに、この労働時間状況の把握義務について、客観的記録によらずに自己申告によるのは「やむを得ず客観的な方法により把握しがたい場合」である必要があります。
なお、自己申告による場合は「その他の適切な方法」を講ずる必要もあります。これは、やむをえず客観的方法により把握しがたい場合については、労働者に対して適正に申告するよう十分な説明を行うことや、申告内容と実際の労働時間の状況とが合致するかについて必要に応じた実態調査の実施、補正をすること、適正な申告の阻害をしないこと、阻害要因を改善することなどの措置が必要になります。
直行直帰でも労働時間の把握は必要
この点、直行直帰の営業職など、オフィス内でPC操作をしない仕事の人については「やむを得」ない場合にあたりそうに思いますが、厚労省は少し厳しく考えているようです。
厚労省見解では、直行直帰であったとしても、例えば「事業場外から社内システムにアクセスすることが可能であり、客観的な方法による労働時間の状況を把握できる場合もあるため、直行又は直帰であることのみを理由として、自己申告により労働時間の状況を把握することは、認められない」としています(厚生労働省平成31年3月27日付 グレーゾーン解消制度に基づく「確認の求めに対する回答の内容の公表」)。
つまり、単に「直行直帰だから」という理由で客観的労働時間の状況把握を行わなくていいことにはならず、例えば客先でPCを操作し社内システムにアクセスする場合などはPCログも確認しなければならないことになります。
実務的には、マイクロソフトの専用アプリケーション「Office365」など、つねに社内システムと同期されるようなモバイルPCを使っているような場合には、これに当たりうるとも言えるでしょう。そのため、前述した管理監督者を含めて、健康管理上の義務となっているため、新たな実務対応を企業は行う必要があるのです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら