労働時間の把握が自己申告では不十分な理由 法改正で「客観的な方法」での管理が必須に

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中小企業を含め、客観的に労働時間の状況を記録することはなかなかの手間です。さらに、労働基準法上の労働時間の突き合わせも行う場合にはさらに大変で、仮にこれを手作業でやるとなれば、人的ミスも生じうることとなり、なかなかに困難でしょう。

しかし、客観的な労働時間の状況記録は、そもそも長時間労働を予防し、医師の面接指導などを含めて健康被害を防止する点にあります。

その観点では、仮にこの義務を果たしていなかったり、ミスが多発する等した場合には、紛争となった際の行政や裁判所からの態度も厳しくなることがありえます。

そこで、労働時間の状況把握については社内システムやクラウドシステムのように、自動的に把握できるツールを用いるのがいいでしょう。

自己申告とのズレが紛争の火種になることも

ただし、社内システムをこれから構築するという場合は数百万円から数千万円の費用がかかる場合があり、中小企業には厳しいかもしれません。そのため、従業員人数1人当たり数百円で利用できるクラウドシステムを用いて管理するのがコストパフォーマンスがいいと考えます。

この客観的な方法による労働時間の把握は、これまで労働時間の管理をおろそかにしてきた企業にとっては厳しいかもしれません。つまり、パソコンやICのログで管理した労働時間と、自己申告労働時間とに齟齬(そご)がある場合には、その時間の違いをめぐって残業代や長時間労働問題で紛争化しうるからです。

そのとき、「何も管理していなかった」では話になりません。すでに義務はスタートしていますので、客観的な労働時間の状況把握の方法について社内で改めて検討すべきでしょう。

倉重 公太朗 倉重・近衛・森田法律事務所 代表弁護士

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くらしげ こうたろう / Kotaro Kurashige

慶應義塾大学経済学部卒。第一東京弁護士会労働法制委員会 外国法部会副部会長。日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員。日本CSR普及協会雇用労働専門委員。労働審判・仮処分・労働訴訟の係争案件対応、団体交渉(組合・労働委員会対応)、労災対応(行政・被災者対応)を得意分野とする。企業内セミナー、経営者向けセミナー、社会保険労務士向けセミナーを多数開催。著作は20冊を超えるが、代表作は『企業労働法実務入門』(日本リーダーズ協会 編集代表)、『なぜ景気が回復しても給料は上がらないのか(労働調査会 著者代表)。

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