ブラック「クビ」が中小企業で横行する理由 大企業の社員だけが法律で保護されている!

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「やりがいのある仕事」に就いた自分は正しい選択をしたと思っていた(写真:xiangtao / PIXTA)

この連載では、「日本の解雇規制が厳しい」という指摘をしてきました。「そうだそうだ!」と思う方がいる一方で、「本当にそうなの? クビになることなんて、世の中沢山ある」と思われる方も多いかもしれません。

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また、「労働法を守っていたら、会社なんてつぶれる」という言葉を、どこかで耳にしたこともあるでしょう。その指摘は的を射ているのです。なぜなら、労働法を守るかどうかは、大企業と中小零細で実態が大きく異なる「ダブルスタンダード」の状態であるため、「労働法が厳しい」という感想と「労働法が守られていない」という感想は、どちらも正解だからです。

では、一体なぜこのようなダブルスタンダードが生まれるのでしょうか? この理由が分かると、現在の労働法がいかに歪み、不公平な状況を作り出しているのかよく分かります。理解を深めるため、新卒で零細のベンチャー企業に入社した田中君(23歳)のケースを例に見てみましょう。

「やりがい」を感じられる仕事を選んだ田中君の場合

就職活動の時、僕は迷った。仕事に安定を求めるか、挑戦を選ぶか。
サークル同期の山田は「この時代、将来の安定が大事」と言い、大手の電機メーカーに入社したけど、どうにも共感することができなかったんだ。
仕事は「やりがい」を直接感じられることをやるべきなんじゃないか。1人でできる仕事の幅も大きい、ベンチャーの方が自分には向いてると考えた。そこで、僕は社長の理念に共感して、従業員数20人のWebマーケティング会社に入社した。
でも、最近帰るのはいつも終電だし、残業代も出ていない。休日だって出勤することもよくある。大企業に勤めてる友人は、仕事はつまらないって言うけど、そこそこいい給料をもらって、休みは遊んでいるみたいだな。どうしてこうなるんだ?
久々に山田君と飲もうということになり、お互いの近況を話してみた。
※ ※ ※
田中:社長と一緒に新規プロジェクトをやってるんだ。仕事は面白かったんだけど、夜中まで働いてるのに残業代は1円も出ないし、労働条件について少し意見したんだよ。そしたら「生意気だ」とか社長に言われてさ。険悪な雰囲気になっちゃったよ。法律を守るって当たり前のことを指摘しただけだと思ったんだけど……。
山田:そうかー大変だな。でもベンチャーだからやりがいあるんじゃないの?ウチなんて、ムダな会議だらけだし。あとは、高給もらってるのに働かない上司が多すぎだよ。エクセルで数字を入力しては戻すことを延々繰り返して仕事やってるアピールしてる「無限エクセル上司」とかな(笑)。ひどいのになると開き直って業務時間中なのにスマホのゲームをやったり、堂々と自席で寝てたりしてるんだぜ。
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