違法にクビにされても法律で救われない現実

「泣き寝入り」撲滅のための制度を導入せよ

なぜ、労働法で「救われない」人たちがいるのか(写真:NOBU / PIXTA)

前回の記事(ブラック「クビ」が中小企業で横行する理由)では、次のような指摘をしました。大企業では社内に法務・人事といった管理部門が存在し、コンプライアンス意識も高いことから、社員が労働法に守られています。その一方、中小零細企業は、経営者側の歯止めをかける仕組みが乏しいといった実情から、社員が解雇規制などの労働法の保護を適切に受けることができないことが多くなってしまいます。つまり労働法は「ダブルスタンダード」状態にあるということを指摘しました。

労働法で救われない理由は

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一部の人は違法な解雇(ブラック「クビ」)をされながらも、泣き寝入りしてしまう現実が、残念ながらあるのです。

なぜ、このようなブラック「クビ」に対して、労働法では救うことができないのでしょうか。今回はその理由を詳しく分析します。理解を深めるため、ブラック「クビ」にあった架空の3人の事例で考えていきましょう。

Aさん~Cさんは、いずれも違法な解雇であるブラック「クビ」にあった。その理由は深夜にわたるプロジェクトの打ち合わせに残業代が出ないことを指摘したら、「トランプショックもあるし、リーマンショックのように今後の情勢は不透明だ。なのに、お前は権利ばかり主張して仕事への積極的な姿勢がない! もう明日から来なくて良い!」という意味不明なものだった。しかし、その後の対応はそれぞれ違うようだ……。
25歳 Aさんのケース(さっさと転職)
「ベンチャーならやりがいがあると思って就職したけど、あんな意味不明なことを言う社長とはきっとうまくいかないな。だったら見切りをつけてさっさと転職してしまおう」
Aさんは早速転職エージェントに連絡。翌週には面接、来月からは別の会社で働くことになった。
 35歳 Bさんのケース(自分であっせん)
「あんな意味不明な理由でクビになるなんて……そんなに簡単にクビにできるのか?日本の労働基準法は厳しいんじゃなかったっけ?でも法律のことは分からないから、まずはググってみよう……。どうやら、弁護士に頼んで裁判をする場合は、時間もおカネもかかるらしい。弁護士さんの所に相談に行くのも気が引けるし。ほう、『労働局のあっせん』というのがあるのか。無料で早いらしいから、自分でできそうだし、これをやってみよう!」
労働局のあっせんとは、労働局が任命した学識経験者であるあっせん委員が、会社・労働者の両方の言い分を聞き、話し合いを促進することにより、和解などによる紛争の円満な解決を図る制度だ。無料で利用することができ、イメージとしては離婚などの調停に近い。東京の場合、九段下にある東京労働局で申し立て可能である。
次ページ裁判官の印象は悪くないようだけれど…
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