以上のようなケースは現実によくある事例をデフォルメしたものです。これを見たうえで、なぜ、労働法で「救われない」人たちが居るのか考えてみましょう。
制度として金銭的保障があるほうが合理的?
理由1:すでに転職を決めている(ある意味泣き寝入りの一種)
退職を強要されたり、解雇を言い渡された段階で、すぐに会社に見切りをつけて、次の就職を決めてしまう、Aさんのような人たちがいます。このような方は、実態としてかなり多い印象があります。次の就職先が決まっているため、「もめ事を抱えたくない」という気持ちからわざわざ訴えないのです。本来訴えれば勝てるのに、時間も手間も掛けたくないから訴えられずに、「自分の権利を実現できない」というのはある意味泣き寝入りの一種と言えるでしょう。裁判をする必要がないのですから、労働法で保護するよりも、最初から制度として金銭的保障が定められているほうが、よほど保護になります。
理由2:純粋な「泣き寝入り」
泣き寝入りと言っても2パターンあります。まったく訴えないケースと、弁護士に頼まずに、あっせんなどで丸め込まれてしまった、Bさんのようなケースです。
まず、まったく訴えないケースとしては、退職強要に応じて退職届を出したり、解雇されても訴えることをそもそもしない場合が多く見られます。これは、「会社と戦う」ことに抵抗感がある人、戦う気力を無くしてしまった人など、さまざまな類型があるようです。また、Bさんのような例は、本来は裁判をやればもっと和解金を取ることが可能でした。しかし、早く紛争を終わらせたいという気持ちから、極めて低額な和解をしてしまうケースも実際に多くあるのです(この点はまさに、濱口桂一郎執筆『日本の雇用終了』に多数の事例が紹介されている)。
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