ブラック「クビ」が中小企業で横行する理由 大企業の社員だけが法律で保護されている!

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田中:え、そんな人が会社にいて、なんでクビにならないんだ?うちなんて、俺も含めて終電まで働いて、休日もトラブル対応とか顧客対応に追われてるよ。
山田:うちは一応、一部上場で資本も大きいしな。ある意味、こんな人たちでもクビにならないのは、すごいことだと思うね。法令遵守ってやつ?でも、その分のシワ寄せが、若手や契約社員の人にいってるな。
田中:そうなのか。なんだか大企業とウチみたいな小さい会社では随分雰囲気が違うんだな。そんなヤツいたらウチの社長がキレてソッコーでクビだと思うよ。まぁ、久々にあって元気出たよ。お互い頑張ろうな!
 ※ ※ ※
しかし、翌日、僕は社長から呼び出され、「ウチは少数精鋭で同じ方向を向いてやってるんだ!経営の苦労を知らないくせに、自分の都合ばっかり主張するヤツはいらん、もう明日から来なくていい!」とクビを宣告されてしまった。
そんなに簡単にクビにできるのか?日本の労働基準法は厳しいんじゃなかったっけ?山田の会社と、一体何が違うんだ……?

コンプライアンス意識の欠如

このケースを見て、皆さんはどのようにお感じになるでしょうか? 単にブラック企業が悪い、という問題なのでしょうか。今回の事例は、分かりやすくするために一部デフォルメしていますが、こうした話は決して珍しいものではありません(この点は、濱口桂一郎執筆『日本の雇用終了』に詳しい)。この事例から見える、日本型雇用の問題点は何でしょうか?

現状、日本の労働法は企業側にとってかなり厳しい内容であり、労働者(正社員)は相応の保護が与えられています。だから「無限エクセル上司」がクビにならないのです。しかし、それは主に大企業を中心とする、「コンプライアンス」意識が高い企業に限った話なのです。

一方で、ベンチャーを含む中小零細はというと、もちろんすべての企業がというつもりは毛頭ありませんが、労働法の規制を守らないところも多く、中にはブラック企業といわれるところもあります。そのような企業の労働者であれば、経営者の意に反するとして突然解雇され、あるいは退職を強要されるという例が実際に後を絶ちません。

大企業と中小零細でなぜこのような違いが生じるのでしょうか。主な理由として3点考えられます(もちろん、これがすべてというつもりはありませんが代表的なものではあるでしょう)。

理由①:社長の暴走を止める仕組みの差

中小零細も株式会社という形態を取っているところが多いですが、株式は社長あるいは社長一族が所持しているというところが多く、実質的にワンマン経営の会社が多く見られます。ベンチャーでも、社長とその仲間で株式を持ち合っているところが多いでしょう。そうなると、社長の意向により物事が回っていくことになり、これに歯止めをかける仕組みがないことになります。

取締役が他に居る場合でも、従業員的な立場であることが多く、そうなると社長に意見をするのが難しい場合も多々あります。もちろん、後に述べるように上場を意識すると少しずつ変わってきますが、同族経営や非上場企業にはそのようなチェック機能が働かないことになります。

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