それでも、37歳のとき、入居した不動産を手配してくれた不動産屋さんの紹介で出会った外資系IT会社勤務の夫と結婚し、すぐに子宝にも恵まれた。だが、妊娠したことを直属の女性上司に告げたとき、言われた一言には、さすがに堪えたという。
「第一声が『おめでとう』ではなく、『あなた、あんまり若くないけど、高齢出産、大丈夫?』って」
半ば意地になって出産後半年で復帰すると、今度はいつの間にか社長の最大の関心事がグローバル展開になっていた。ニューヨークやロンドンなど海外店舗の進出や立て直しに力を奮うが、6年勤めた会社への熱い思いが冷めていくのも実感していた。
「私はこの先もずっと長く働きたい。でも、会社は急成長し、私が入社した時とはまるで別の会社になっていた。自分のやりたいことと会社の方向性がずれてきた気がしました。そこで、ふと自分はこの先、どこで何がやりたいのか、考えてみたんです」
そうだ、化粧品だ。それも、いちばん好きな資生堂で自分の専門のマーケティングをやることだ。乳飲み子の育児に追われながらも、金井さんは希望という感情を思い出していた。
出産後、40歳で資生堂に入社
女性社員が多い資生堂は、社員の育児支援に惜しみのない援助をする会社だ。ワーキングマザーも多い。2歳の子どもがいることは、入社の障害にはならなかった。
こうして、2010年12月、40歳のとき「3度目の正直」で念願の資生堂に入社。すると、慣れる間もなく、大きな仕事が待っていた。
「挨拶に行ったら、部の人から『すぐにニューヨーク行きのチケット、取って』と言われて面食らいました」
国際マーケティング部は、いったんプロジェクトを止めて、金井さんの入社を待ってくれていたのだ。
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