新卒では、資生堂は駄目だったが、大手化粧品会社に就職。けれど、「マーケティングオタク」の金井さんは研究職の仕事はあまり興味が持てなかった。そこで、マーケティングを本格的に学ぶため、会社を辞めて、MBA留学へ。
留学後はまた化粧品会社に戻ってマーケティング職に就きたいと思っていたし、実際、資生堂の中途採用に応募する機会もあった。だが、当時の資生堂は、「第二新卒枠」しかなく、またイチから社会人をやり直す選択肢しかなかった。それに、マーケティングに配属される保障もない。泣く泣く、諦めるしかなかった。
そこで、MBAの同級生に勧められた、米国スポーツメーカーに就職。マーケティングの本場アメリカ本社でマーケティングプログラムを1年間、みっちり受講するチャンスにも恵まれた。
しかし、帰国して今後の身の置き場を考えたとき、自分がやりたい仕事は、日本の製品やサービスを海外でも売れるようにすることだと気づいた。
「アメリカの会社は、売り方は優れているが、製品はそうでもない。片や日本は、製品はすごいが売り方が弱い。私は、自分が心から優れていると思う商品を売りたい、と思ったんです」
30代は主に、大手カジュアル衣料チェーンで商品のマーケティングを手掛けてきた。
そこは、いわゆるワンマン社長が「トップダウン」で、経営判断する会社。“経営の天才”の間近で働くのは刺激的だったが、朝令暮改が常の天才の思いつきに振り回される苦労も、嫌と言うほど味わった。
「当時はちょうど、野菜や化粧品の製造販売など、社長の新規事業をやりたい思いが爆発した時期。私は、社長のアイデアを全部下調べし、どの事業なら可能性があるか、現実にオペレーション(運営)できそうか、交通整理するのが役割でした」
だが、せっかく入念にした準備も社長の鶴の一声でフイになる。夜10時にやっと帰ろうかと思うと、これまた社長の一声で、5分後に集合させられるなど日常茶飯事。これでは、プライベートも何もない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら