2015年がスタートした。今年はビジネスパーソンの「健康管理」が一つの転換点を迎える。多くの企業で、従業員の精神的な健康状態を把握する「ストレスチェック」の実施が義務づけられるのだ。関連法制が、今年12月末までに施行される。ただ、このことは多くのビジネスパーソンが意外に把握していないのではないだろうか。
従業員50人以上の企業が対象に
ストレスチェックの義務化は、昨年6月に成立、公布された労働安全衛生法の一部改正を受けた動きだ。原則として労働者50人以上の企業が対象で、従業員に対して医師や保健師などによる心理的な負担の程度を把握する検査(ストレスチェック)を実施することが、事業者(企業)の義務となる。同50人未満の事業場は当分の間努力義務となる見込みだ。
ストレスチェックの結果は、医師や保健師などから直接、検査を受けた労働者本人に通知され、それを本人の同意なく事業者に提供することは法的に許されない。一方、ストレスチェックによって、高ストレスな状態にあるというような判定をはじめ、一定の要件に該当した労働者本人が申し出れば、事業者は医師による面接指導を実施し、必要に応じて、就業場所の変更や、労働時間の短縮、作業の転換など就業上の措置を講じることが義務となる。
現時点では推測の域を出ないが、国がこの制度を導入する目的は経済的な損失の軽減にありそうだ。
近年では、うつ病をはじめとして精神面に不調を来す労働者が増え、自殺者数は高止まり。企業も対策はしているものの、効果が出ていると感じている企業は51.4%と半数であるとの報告もある(日本生産性本部メンタル・ヘルス研究所の「第6回『メンタルヘルスの取り組み』に関する企業アンケート調査結果/2012年11月」)。
自殺やうつ病がなくなった場合の経済的便益(自殺やうつによる社会的損失)の推計額は、「2009年の単年度で約2兆7000億円」「2010年でのGDP(国民総生産)引き上げ効果は約1兆7000億円」という試算がある(厚生労働省2010年9月報道発表資料)。精神的な不調を早期に発見、労働者自身のセルフケアや事業者の対策を促すことが、企業活動における経済的な損失だけでなく、医療費の削減につながるという理屈だ。
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