だが、メンタルチェックを受けるビジネスパーソンの立場になると、心配なことがいくつかある。うつ病を患っていたり、兆候があったりする労働者が結果的にあぶり出され、それを理由に望まない配置転換や降格など、事業者から不利益な扱いを受ける可能性があることだ。
この点は、労働安全衛生法第66条の10第3項に「事業者は、労働者が申出をしたことを理由として不利益な取扱をしてはならない」とあり、法律上は明示的に禁止されている。ストレスチェックの結果判定だけで、就業上の措置を変えることはできない。
ただ、これが厳密に守られる保証はない。また、法律に規定されていないこともある。
「不利益な扱い」につながる懸念
現時点では、ストレスチェックを労働者に受けさせることを義務付けられているのは事業者(企業)で、労働者自身が受検しなければならないワケではない。そもそもこの点は制度実施時の有効性に関わるので疑問が残るが、企業がストレスチェックを受けない労働者に対し、それを理由にした不利益な扱いをしないかどうかという点は、法律に規定されておらず、心配な点ではある。
また、ストレスチェックの結果を事業者に提供することに同意しなかったり、高ストレスとの結果で面接指導が必要となったにも関わらず、面接指導の申出をしなかったりする労働者に対して、それを理由に事業者が不利益な扱いをするかもしれない。この点も法律には厳密に定められていない。
労働者は精神的に「問題がない人」「問題がないと思っているが実は問題がある人」「すでに問題があると自覚している人」に大別される。問題がないと思っていてストレスチェックを受けた結果、実は問題があったという人が出た場合はどうか。ショックを受けて、仕事に対するモチベーションが下がるということはありえない話ではない。また、それを恐れて、ストレスチェックで嘘をつく労働者も出てくるかもしれない。
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