「書を捨て、町に出よ」はおかしくないか? 読書と実務の正しいバランス

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完璧主義のリーダーは、むしろ有害

しかし、そうやって勉強していく中で、はまりそうな罠がいくつかあります。

そのひとつは、考えてもわからない内容は存在するということです。そういった内容にうっかりはまると膨大な非効率が生じます。

考えてもわからない具体的な内容としては、裏の文脈や背景まで正確に理解しないと間違うものです。たとえば新興国や未知の地域での固有の価値観に基づく政策や微妙なルール、あるいは各地域のキーマンの性格や人間関係、趣味嗜好にまで踏み込んだ内容、または法律や税務、会計の中の極めてテクニカルな部分もそうかもしれません(これらの例はいずれも私にとっての実話です。レベル感がバラバラなのでいま一つピンと来ないかもしれませんが……)。

いずれにしても言いたいのは、大枠判断のための全体観の理解は絶対に必要ですが、個別の問題解決においては、餅は餅屋で専門家に任せればよい領域は必ず存在します。そんな罠にはまらないようにするためには、考えてもわからない内容はあらかじめ「捨てる」ことだと思います。

でも特にリーダーという立場にいると、仕事を采配していく中でわからないからといってなかなか一部の領域を「捨てる」という意識は持ちづらいかもしれません。ただ、私はリーダーが完璧である必要はまったくないと思っています。万能でないからこそ、周囲に尋ね、そこからコミュニケーションが生まれていくものではないでしょうか。

わからないことは聞く、相談する、教えを請うという姿勢の積み重ねが、周囲のメンバーに対する最大の承認行為だと思います。完璧主義のリーダーは、組織の中でむしろ有害とさえ感じます。

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