スーパー編集者が『宇宙兄弟』の次に描く夢 新世代リーダー 佐渡島庸平 作家エージェント
昨年10月、出版界にひとつのニュースが駆け巡った。マンガ界きってのトップ編集者が会社を辞め、作家エージェント会社を立ち上げたのだ。
その編集者の名は、佐渡島庸平。マンガ界に名を轟かす、有名人である。
佐渡島は、2002年に講談社に入社した後、一貫して『モーニング』編集部に所属。井上雄彦『バガボンド』、安野モヨコ『さくらん』のサブ担当を経て、03年には自らの東大受験経験を生かし、三田紀房『ドラゴン桜』をプロデュースした。さらには、小山宙哉の『宇宙兄弟』を、累計1000万部を超すメガヒットへと育て上げた。
佐渡島の起業は、2つの意味で驚きだった。講談社社員という恵まれた立場を捨て、起業したことがひとつ。そしてもうひとつは、作家エージェント業という、日本では耳慣れない業務をスタートしたことだ。
佐渡島は、出版界ではあまり見掛けないタイプといえる。チャラチャラした“業界人”タイプでも、カネのにおいが漂う“商売人”タイプでも、線の細い“優等生”タイプでもない。
質問に対する受け答えは、簡潔にして論理的。敏腕コンサルタントのように、ムダのない答えがテンポよく返ってくる。しかし、だからといって、冷たさや嫌みを感じさせるわけではない。その言葉には、沸き立つ情熱、そして何よりも作品に対する愛がにじみ出ている。
「鋭利な頭脳」と「ほとばしる情熱」と「作品への特大の愛」——この3つを兼ね備えた“スーパー編集者”は、どのようにして生まれたのか。そして、起業して何を成し遂げようとしているのか。まずは、彼が青年期を過ごした、南アフリカ時代からつづっていこう。