「書を捨て、町に出よ」はおかしくないか? 読書と実務の正しいバランス

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私の交渉が失敗した理由

もう1つは、(矛盾するようですが)勉強しすぎないことです。これこそまさに「書を捨てよ、町に出よう」の教えの本質そのものでもありますが、あまりに勉強しすぎると物事を固定的にしか見られなかったり、あるいは学んだ内容の中から答えを探す癖がついてしまいます。

何年か前のことですが、大小さまざまな交渉が必要な仕事があり、その中で交渉相手の情報や交渉術やノウハウに対する情報を、徹底的に収集したことがありました。そこでの一連の交渉では、あらゆる面で自分の思いどおりにいったのですが、最後の最後で交渉は決裂しました。

当時は決裂の理由がまったく理解できていなかったのですが、最近当時の交渉相手と会う機会がありました。このとき聞いたのは、私のああ言えばこう言うというテクニカルな交渉話法が、相手をとても不愉快にし、論破されたという印象が強かったとのことでした。要するに勉強していた交渉ノウハウにあまりに傾倒し、策におぼれたからでありました(そういう「負けるが勝ち」というノウハウも含めて交渉術かもしれませんが……)。

結局のところ、自分からにじみ出るべき誠意や気持ちという部分が抜けて、結局、うわべだけのノウハウに走った結果でした。

いくらマラソンの技術を勉強し、水泳の泳法を勉強しても、実際に走り始め、泳ぎ始めないと本当のところはわかりません。書物から学ぶことには限界があります。でも書物から学ばないのはもっと可能性を狭めるもので、だからこそまず書を読み、あくまでそのうえで「書を捨てよ、町に出よう」が生きた教えとなっていくものだと思います。

※ 本文は筆者の個人的見解であり所属する組織・団体を代表するものではありません。

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