日本最先端の「離島」に進化!海士町の秘密

教育で一歩先行く島はいかにして生まれたか

なぜそれほど人気なのか?親の移住についてくる子どもがいるのも理由だが、それだけではない。そのひとつに、同校で行われている「高校魅力化プロジェクト」の影響が挙げられる。

魅力化プロジェクトのすごい威力

同校は2008年まで、統廃合の危機に瀕していた。島根県では3年連続で1クラス21名を切ると統廃合の対象となるが、当時の島前高校は28名にまで減っていた。高校がなくなってしまうと子どもだけではなく、その親も一緒に島外に流出してしまうため、統廃合は避ける必要があったのだ。

そこで2008年に「魅力化の会」が結成され、どうしたら子どもたちに集まってもらえるか、構想を練った。その結果、2014年の春には、それまで1学年1クラスしかなかったものが全学年2クラス、1学年60名程度にまでなった。

そのプロジェクトで実際に行われたことは、次の2つだ。公立の塾を作ることと、島前高校の中に地域資源を活用した体験型・課題解決型の学習に特化したコースをつくることだ。

前者のきっかけは、島外に流出した子どもの調査だ。それまで島の子どもたちの半数以上が島外に流出していたが、どのような子どもたちが島外に出てしまっているか、その子の学力、意欲、経済的環境について調査した。結果、学力も意欲も高く、経済的にも比較的恵まれている子どもたちが島から離れてしまっていることが分かった。そこで生まれた発想が、学校だけではなく、公立の塾を設けることで島内で大学進学の後押しをし、流出を防ぐというプランだ。

隠岐國学習センター

その公立塾は「隠岐國学習センター」と呼ばれ、現在、島前高校の生徒160名のうち、140名が通っている。教えるのは、ベネッセやリクルート、Z会など大手企業を退職して移住してきた人たちで、学力向上だけではなく「夢ゼミ」と呼ばれるキャリア教育についても重視している。

夢ゼミでは、地域の担い手の育成や、地域の課題解決に挑戦する起業家マインドの醸成を行っているという。

夢ゼミをリードする、隠岐國学習センター長、豊田庄吾さんに話を聞いた。豊田さんはかつて、大手情報出版会社を経て人材育成会社に入り、大手企業の研修講師をしたり、全国の公立学校をまわりながら起業家教育・キャリア教育の講師をしていた人物だ。豊田さんはそこで、衝撃的な光景を目にしたという。偏差値の高い大学に入ることがゴールという教育を受けてきた若者たちが、自分はよい大学出身だから大企業入社後は大きい仕事をしたいと無邪気に語る様を目の当たりにし、違和感を持ったのだという。

そうした経験から、社会人としての基礎力をもっと若いうちに身につけておくべきではないかと考えるようになったという。

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