
[著者プロフィル]Gary Stevenson(ギャリー・スティーヴンソン)/ユーチューバー、元トレーダー。1986年生まれ。シティバンクでトップトレーダーとして活躍し億万長者となるが、2014年に退職。英オックスフォード大学で経済学の修士号を取得後、20年にYouTubeチャンネル「Garys Economics」を立ち上げ、格差拡大に反対するための発信などを行っている。(撮影:今井康一)
東ロンドンの貧しい家庭で生まれ育つが、数学的才能とすさまじい努力で20代前半にしてシティバンクのトップトレーダーに上り詰める。が、嫉妬にまみれた狂気の世界での“成功”はやがて著者の精神をむしばんでいく。
トレーディングの現場は「マクベス」の世界

『トレーディング・ゲーム: 天才トレーダーのクソったれ人生』(ギャリー・スティーヴンソン 著/千葉敏生 訳/早川書房/2860円/488ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
──トレーダーの仕事や生きざまがリアルに描かれています。
世界中の超優秀な若者が「トレーダーになって成功したい」と集まっていた。最高の成績を取って最高の職を得るために、異常なほどの努力をしていた。それは執念であり、野心であり、狂気に近い。トレーディングの現場は野心と慢心にあふれていた。
若者が「金持ちになりたい」「成功したい」という気持ちに取りつかれてゲームのように世界を操作しようとする──描きたかったのは、「世界を支配しようとするマキシマリスト」の話だ。まさに『マクベス』の世界。野心、狂気、そして執着が渦巻いている。
本作の中で同僚の一人が吐いたセリフがこの本を象徴している。「誰かと出会うと、その瞬間に、相手が俺より上なのか下なのか、知りたくてたまらなくなる」。これは「個人主義への執着と競争への執着の末路」の話だということ。まさに映画『バトル・ロワイアル』(2000年公開)のような世界だ。
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