加熱式たばこ「アイコス」の攻勢でJTの国内シェアは低迷! 黒字定着の医薬事業からも撤退、たばこに経営資源を集中し巻き返しを図れるか

「うちにはもう、医薬を成長させていく体力がない」――。JTの嶋吉耕史副社長は淡々とそう語った。
日本たばこ産業(JT)は5月7日、医薬事業からの完全撤退を発表した。JT本体の医薬事業と傘下の鳥居薬品を、医薬品大手の塩野義製薬へ売却する。一連の事業の譲渡価額は総額およそ790億円。増加するキャッシュの使途は未定としている。
JTは収益の多角化を視野に1987年に医薬事業へ参入し、1998年に鳥居薬品を傘下に収めた。参入から長年赤字が続いていたが、2016年以降は黒字が定着。以来、創薬力を武器に、花粉症や皮膚疾患などの分野で存在感を示してきた。
だが近年は、研究開発費が重荷となり利益が伸び悩んでいた。JTは今後、資金力のある競合大手と張り合いながら事業を成長させるのは困難と判断し、今回の撤退に至った。
主力の紙巻きたばこは需要が減退
2024年12月期における医薬事業の売上高(国際会計基準)は944億円で、グループ全体の売り上げ(3兆1497億円)に占める割合はわずか3%程度。それでも、中核のたばこ事業に経営資源を集中できる環境が整うのは現在のJTにとっては重要なことだ。
同社の稼ぎ柱は、たばこ事業の売上高2兆7786億円の9割超を占める紙巻きたばこ(2024年12月期、東洋経済推計)。JTの予測によれば、競合他社も含む世界全体における紙巻きの売り上げは、値上げなどを通じて2035年まで成長を続け、売り上げ構成比で60%以上を維持するという。
だが、先進国を中心とした多くの主要エリアにおいて、紙巻きの需要は縮小している。とりわけ、お膝元である日本の状況は深刻だ。国内では健康志向の高まりなどから喫煙率の低下が進む。実際、日本でのJTの紙巻き販売本数は直近10年で半減している。
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